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駒鳥から駒鳥。三男独白です。暗い、かも知れません…。
それに気づいたのはいつだろう。
パトロールから戻ってベッドに入るのが明け方頃。ブルースはもっと早くに僕を家に戻そうとするけれど、でも相棒を見捨てて自分だけぬくぬくと床に入るっていうのは、違うと思う。うまくいえないけど。
とにかくその明け方に、夜が終わって朝が来るほんの何秒かの音のない世界に、
――彼は現れる。
見慣れた影、ほっそりとした少年の体。僕に良く似ているけれど、僕ではない。
ウェイン邸の寝室でも、僕の自宅の部屋でも、あるいはまだ帰路の途中だとしても、ふとした瞬間に彼は僕の前に現れる。いや、違う。最初は僕に向かって何かを語り掛けたいのかと思った。でも違うのだ。
彼は、ロビンを追っているのだ。
そう気づいたら、目蓋が熱くなった。でも僕は捻くれているから、涙は出ない。
お前のせいでどれだけブルースが傷ついたと思う。彼だけではなく、ディックさえもわだかまりを抱え込んだ。
ジェイソン・トッド。僕はお前に同情したりしない。
お前のためになんか泣いてやらない。お前がどれほどロビンを求めようと、僕はロビンを降りたりしない。
そう宣言しても、彼は僕の声など聞かず、ただ朝の白い光にすっと解けていく。
本当は彼の霊でもなんでもなく、僕が勝手にみる幻影なのかも知れない。
ジェイソン・トッドに一番こだわっているのは僕なのかも知れない。
遠くない未来に僕もディックのようにブルースから離れて、ひとりで生きていくのかも知れない。
それとも、彼のようにロビンのままこの街に沈んでしまうのか。あるいはブルースが先に失われるかも知れない。バットマンのケープを掴んで闇に沈みがちな彼を引っ張りあげるのがロビンの仕事だ。もしそれがなくなったら、そのとき僕はどうするのだろう。
朝靄の向うから光が僕の頬を照らす。産毛を撫でるように。失われたロビンは姿を消し、そして僕もまたただの少年としてベッドに潜り込む。そうして今度は本当に夢を見るのだ。
もし、ぼくが死んだら、きみは
―― 夜明けに 泣いて くれるだろうか。