ボトルシティで遊ぼう。

ボトルシティの住人の大半がバットマンを愛していればいいというだけの発作的衝動です。
ボトルシティは捏造されていますので、ご注意ください。むしろ教えてください。何なのあれ。
全然孤独じゃなさそうな要塞でコメディです。ものすごくくだらないです。

　スーパーマンの孤独の要塞は乱反射する光の洪水で、そのひとつひとつは柔らかなのに、どうしてか目に刺さる。美しいのに涙が出てきて正視しがたい。そして涙は余計に光を溢れさせるのだ。
　連れてこられた覚えはなかったが、目を開けるとクリスタルの天井から青白い光が降り注ぎ、彼の孤城だと知った。体は動かない。身を動かそうとすると、鈍い痛みが走り、頬にはカウルもなく、私は全裸だった。

「……く、らーく？」

　喉から出たのは引き攣れた声で、自分が何か大怪我でもしたのではないかと察する。少し待ってみたが、クラークが現れるような気配はなかった。
　寝台から這いずって降りる。骨が軋む。吐き気がして、洗面所を探すのだが、いまひとつ建造物の構造が分からない。どこもかしこも平坦で突起がなく、出入り口らしきところは開かない。
　もしかして私は隔離されているのだろうか。でも、何故――。

　ふと何かの気配に振り返ると、ベッドの上の通気孔から小さなスーパーマンたちが顔を出していた。
「！！！！！！」
「ζτ∈ψ%ν솆！！
「§κλδшсу！」
「фы￡βυξ＄οα∽∫‰∂ρω≡φёж？」
「и∋к‡∴ла！」
　瞬間飛び交う悲鳴のような騒音に頭が真っ白になる。耳が慣れてくるとそれがクリプトン語であることだけが何とか理解できたが、しかし内容まではわからなかった。よく見ると彼らの顔はクラークとは違うようなのだが、しかし大きさが手の平ほどしかない。まるで人形だ。衣装はスーパーマンと同じ赤と青。胸にはエル家の紋章。だが何なのだ、これは。
「クリプト！」
　あまりのことに動顛していると、視界がさっと赤に覆われた。力強い腕が私を捉える。クラーク。
「一人も逃がすな！」
　ウォン！とクリプトの声が返され、あとは何か小さな悲鳴が入り乱れた。
「ああ、ごめんよ。ブルース」
　体を覆われたマントから私の顔だけ出し、クラークは頬擦りしてきた。そういえばシーツを引き摺ってはいるが私は裸だった。少し寒い気がする。
「何なんだ、あれは」
「キャンダーから出てきたんだよ。私の衣装を真似てね、ごっこ遊びをしていたらしいんだが、君の治療中にキャンダーから抜け出してしまって。大丈夫。クリプトが全部掴まえるよ」
　微笑み、クラークはいたわるように私の背を撫でた。
「そうか…。やはり私は怪我をしたのだな」
「覚えてないなら今は無理に思い出さない方がいい。瓦礫に埋まってね、粉砕骨折をしていて、だからここへ連れてきたんだ」
「……ありがとう。しかし、彼らは何をしに出てきたんだ？」
　出てきてもあの大きさのままなのか。しかし外からキャンダーを覗き込んだときよりは随分と大きい。
　クラークは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「君に会いにさ。奴ら、君のファンなんだ」
　砕けた君のカウルを盗んだりとか色々悪さをして大変だったんだ、と言い募るクラークに寄り掛からずにはいられないほど、私は気を失いそうだった。なんてくだらないんだ。