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シルバー・セント・クラウドの面影を脳裏に浮かべながら読んでいただけるといいかも知れないし、ダメかも知れない。結局シルバーは出ないので、知らなくっても全く平気。何それ。と自分で突っ込んどきます。
なんとなく、ブルースは別れた女性で特に気に入っていた人に関して、何かの花に例えて感傷に浸ってそうなイメージがあったりするので…すが、私だけでしょうね。そうでしょうね。はい。ごめんなさい。
えーと。
クラブルです。
超人ほんのり鬼畜風味(当社比)。
でもキスで終わってます。
ご了承いただけましたら、どうぞ。
部屋に帰ったら、ベッドの上でブルースが丸まっていた。
今日は一日で何回悲鳴に呼び出されたかわからないし、相変わらず編集長は怒鳴りつけるし、ロイスには穴埋め記事の構成を押し付けられ(もちろん彼女は申し訳なさそうにしていた)、盲腸で入院したジミーの代わりのカメラマンは使えないしで、散々だった。もうこれ以上は無いほどの疲労だ。
だからこれはご褒美だ。
口元を緩めたままブルースに近付いたが、彼は起きなかった。顔色も悪くないし、鼓動も平常だ。ただ眠っているだけ。起きないのは、私に気を許してくれているからだといいのだが。
「ブルース?」
ジャケットも着たままで丸まっていても、この美しい社主は絵になる。私の乱雑な部屋はシーツさえかろうじて替えているものの、部屋の隅にはランドリーバスケットがシャツで山盛りになっているし、机から書類は落ち、シンクには使用済みの食器が溜まっている。もっとロマンチックな部屋で迎えたいものだが、しかし洗練ということでは彼の寝室に勝てるわけがないのだからいいだろう。
「…クラーク?」
目を開けた彼は再び目を閉じ、「帰ってきたのか…」と呟いた。
「そう。ただいま」
「ああ。時間はあるのか?」
「あるよ。どうしたんだい?」
差し出された手を引いて起こせば、ブルースはそのまま私の首に腕を回してきた。
「クラーク。キスしよう」
ブルースは言うなり、そっと唇を重ねてきて、私は言葉で返すよりも行動で同意を示した。
ブルースは優しいキスが好きだ。啄ばむように何度も角度を変える。私はその合間に呼吸を見計らって、舌を絡め取るのが上手くなった。機嫌が良ければ答えてくれるし、悪ければ押しのけられる。
今日はどちらでもなかった。ブルースは、色っぽい吐息を漏らし、こつりと額を合わせて一休みした。
「……どうしたんだい?」
黙っていたかったが、ブルースはもう自分で立っていられないのではないかというほどに体から力を抜いて、私に寄りかかってきた。何というか。甘える。甘えられている。でもブルースに?
悲しいかな、猜疑心が勝った。私の知っているブルースは寂しがりやだ。だが簡単に甘えられるような素直な性格ではない。これは何かに操られているのではないかと疑うほど、普段の彼は強情で、意地っ張りだ。
「バラが…」
しかしブルースは唇から漏れた言葉を、なかったことにすることにしたらしく、再び口付けてきた。
「……クラーク、ひどくしてほしいのだが」
キスを解きながら濡れた目で頼まれたら、断れるわけがない。あっさりと追求は後回しにして、宝くじに当るよりも貴重なご褒美を堪能することにした。
「Okay,うんと甘くするよ」
「お前でいっぱいにしてくれ…」
普段なら毒舌が返ってきそうなところなのに、ブルースはひどく切ない顔で誘ってきた。どうしてそんな顔をするのか。どんなバラが君にそんな顔をさせるのか。
「愛しているよブルース」
ベッドに縫いとめ、真正面から愛を告げると、やっとブルースは恥らうように目を逸らした。
羞恥に唇を噛む仕草がこんなに愛しいとは。一度思い出せばもうブルースはまともに私の顔さえ見られない。
「可愛いブルース。私のものだ」
どれほど美しいバラが彼の心を騒がせようとも、決して逃がしてはやらない。
だって君は、私の元に来たのだから。