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20080721
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皇帝ジョーカーをパラパラめくった衝撃でちょっと、やられました。
分類はクラブル。ものすごい断片です。



 何故?そんなことはわからない。
 カタカタと震え出す自分の手を止められない。
 そっと手を体の後ろに隠し、何気ない風を装って廊下に出る。会議などわたしがいなくとも進行するのだ。大丈夫。いつものサボり癖だと皆、納得するだろう。
「どうしたのブルース。顔が真っ白よ」
 運悪くロイスに出くわし、そっと腕に触れられたが、もう耐えられない。
「何でもないよ」
 微笑み返す嘘つきめ。本当は叫び出したいくせに。

 ――触るな。わたしに近寄るな。

「何でもないなんて。貧血じゃない。冷たいわ?」
「やめてくれ」
 ロイスが頬に指を伸ばし、それを押しのける。口から出たのは平淡な拒否で、驚く彼女の瞳に罪悪感が沸くが、だが止められなかった。
「大丈夫だ。急いでいるから失礼するよ」
 振り切って歩き出したがひどい浮遊感で本当に自分が歩いているのか確証が無い。
 このまま真っ直ぐ歩いていって、あの窓から飛び降りたらどうだろう。きっと清々しいに違いない。

 ――死を。

 そうか。わたしは死にたいのか。いいやそんなはずがない。わたしは死を望まない。
 涙が出そうだ。泣きたくなんてないのに。

「ブルース」

 光だった。窓辺にたどり着いたわたしは光の洪水に絡めとられ、高層ビル特有の厚いガラスに自由への道を阻まれた。ああ。何も考えたくない。

「ブルース」

 誰だ。クラーク。お前か。何故わたしを呼ぶ。

「泣かないで。泣くならここで」

 何を言っているのかわからない。泣くなといい泣けというのか。
 いつの間にか世界は真っ暗闇だった。クラークの心音が聞こえる。温かい。体も動かない。
「いいよ。何も考えないで。おやすみ、ブルース」
 考えるななどと、ここはどこなのだ。何故世界にお前しかいない。ロイスは。でも。
「君が起きるまで抱っこしていてあげるから」


 ――どうして光を見つめて、涙が出るのだろう。クラーク。

 どうして、闇に安息を、わたしは。 

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