20080721
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
書いてる途中でゴミだしに行ったら近所の猫にすりすりされてきましたよ、ちょっと癒されたような、勝手に遊ばれたような…。。
ギャグに分類していいのかわからないぐらい短いクラブルですけど、立川の仏お兄さんの黒歴史に触発されて書きました。きっとギャグです。
ギャグに分類していいのかわからないぐらい短いクラブルですけど、立川の仏お兄さんの黒歴史に触発されて書きました。きっとギャグです。
「うおぅあ!」
ソファもない小さな部屋で、ブルースは所在無くベッド脇の窓から外を眺めていると、キッチンからクラークのひしゃげた悲鳴が聞こえた。
「クラーク?」
「いや、なんでもない!」
クラークがリモコンを手に取るより先に、ブルースはその古びたテレビのブラウン管に映るそれを見た。
赤と青の軌跡、そして壊れた建物。映像に添えられた笑い声はホームコメディにありがちなわざとらしいもので、ブルースは長い睫毛を瞬かせ、クラークは黙ってテレビを消した。
「――人生の汚点なんだ」
「……スーパーボーイだった頃か」
スーパーマンの若かりし頃、つまり少年時代。ヒーローを目指した本当の初期で、活動範囲はあまり広くない。ホームビデオの普及率の問題もあり、残された映像はそれほど多くない。だが数年に一度はどこかのテレビ局が出してくるのだ。
人を助けて勢いあまって車を破壊。
道を塞ぐ瓦礫をどけたら、その先にあった塀を破壊。
飛ぶスピードを加減し損ね、地上ではその衝撃波で牛が失神。
「もう思い出したくも無い、暗黒の時代だよ…」
クラークがうつむくと、眼鏡が反射して、より一層落ち込んだ様子に見える。
ブルースはその手からマグカップを外してやった。インスタントの味をごまかすために牛乳を入れ、クラークを促してソファ代わりのベッドに移動する。椅子はあることはあるのだが、今はクラークの脱ぎ捨てたあれこれで埋もれてしまっている。ブルースは黙って温いカフェオレを飲み、背中を丸めたクラークがほとんどコーヒー入り牛乳といっていい代物をごくごくと音を立てて飲むのを、不思議そうに見つめた。
「――なんで、あんなのいつまでも放送するんだろう…」
クラークはマグカップを床に置くと、乱雑にメモの貼られた壁を睨んだ。彼の心はまだ少年時代の汚点に向けられており、ブルースは何と言ったものか返答に困った。恥ずかしさで消したい過去と言えば何だろう。十年経ってもまだ語り継がれている緊張のあまり舞踏会で失神した男子は、幸いにしてブルースではないし、ゴードンの部屋の窓から落ちたのは夜の活動を始めた最初の頃だが、目撃者はホームレスの連れ合いの犬だけだ。
慰めの言葉も見つからず、ブルースが内に意識を向けている間に、クラークは距離を詰めていた。
「ブルース?」
両手で包み込むようにしていたカップを取り上げられ、自然と視線が上を向く。
クラークは心配げな顔をしていたが、逆光になっていて、よく見ようとブルースは目を細めた。
「無理して飲まなくても」
「お前が――」
インスタントコーヒーの味を案ずるクラークの袖口を引っ張り、ブルースは俯いた。
「お前が、ああやって若い頃に失敗していた方が、いい」
「ブルース?」
「……お前が完全無欠じゃない方がいい」
完全無欠なヒーローなんかいらないし、全知全能なんてありえないと、幼いあの日に知った。
一瞬ブルースが泣くのかと、クラークは焦り頬に手を添えたが、ブルースは笑った。
「その方が安心するし、嫌いにならずに済む」
「ブルース…」
「今なら私も牛乳くさいだろうな」
あんまりにも婉曲で色気がない台詞だったが、クラークは笑ってキスを捧げた。
ソファもない小さな部屋で、ブルースは所在無くベッド脇の窓から外を眺めていると、キッチンからクラークのひしゃげた悲鳴が聞こえた。
「クラーク?」
「いや、なんでもない!」
クラークがリモコンを手に取るより先に、ブルースはその古びたテレビのブラウン管に映るそれを見た。
赤と青の軌跡、そして壊れた建物。映像に添えられた笑い声はホームコメディにありがちなわざとらしいもので、ブルースは長い睫毛を瞬かせ、クラークは黙ってテレビを消した。
「――人生の汚点なんだ」
「……スーパーボーイだった頃か」
スーパーマンの若かりし頃、つまり少年時代。ヒーローを目指した本当の初期で、活動範囲はあまり広くない。ホームビデオの普及率の問題もあり、残された映像はそれほど多くない。だが数年に一度はどこかのテレビ局が出してくるのだ。
人を助けて勢いあまって車を破壊。
道を塞ぐ瓦礫をどけたら、その先にあった塀を破壊。
飛ぶスピードを加減し損ね、地上ではその衝撃波で牛が失神。
「もう思い出したくも無い、暗黒の時代だよ…」
クラークがうつむくと、眼鏡が反射して、より一層落ち込んだ様子に見える。
ブルースはその手からマグカップを外してやった。インスタントの味をごまかすために牛乳を入れ、クラークを促してソファ代わりのベッドに移動する。椅子はあることはあるのだが、今はクラークの脱ぎ捨てたあれこれで埋もれてしまっている。ブルースは黙って温いカフェオレを飲み、背中を丸めたクラークがほとんどコーヒー入り牛乳といっていい代物をごくごくと音を立てて飲むのを、不思議そうに見つめた。
「――なんで、あんなのいつまでも放送するんだろう…」
クラークはマグカップを床に置くと、乱雑にメモの貼られた壁を睨んだ。彼の心はまだ少年時代の汚点に向けられており、ブルースは何と言ったものか返答に困った。恥ずかしさで消したい過去と言えば何だろう。十年経ってもまだ語り継がれている緊張のあまり舞踏会で失神した男子は、幸いにしてブルースではないし、ゴードンの部屋の窓から落ちたのは夜の活動を始めた最初の頃だが、目撃者はホームレスの連れ合いの犬だけだ。
慰めの言葉も見つからず、ブルースが内に意識を向けている間に、クラークは距離を詰めていた。
「ブルース?」
両手で包み込むようにしていたカップを取り上げられ、自然と視線が上を向く。
クラークは心配げな顔をしていたが、逆光になっていて、よく見ようとブルースは目を細めた。
「無理して飲まなくても」
「お前が――」
インスタントコーヒーの味を案ずるクラークの袖口を引っ張り、ブルースは俯いた。
「お前が、ああやって若い頃に失敗していた方が、いい」
「ブルース?」
「……お前が完全無欠じゃない方がいい」
完全無欠なヒーローなんかいらないし、全知全能なんてありえないと、幼いあの日に知った。
一瞬ブルースが泣くのかと、クラークは焦り頬に手を添えたが、ブルースは笑った。
「その方が安心するし、嫌いにならずに済む」
「ブルース…」
「今なら私も牛乳くさいだろうな」
あんまりにも婉曲で色気がない台詞だったが、クラークは笑ってキスを捧げた。
PR
この記事にコメントする