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20080721
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昨日書き忘れましたが、探偵ごっこの間が空きすぎて、自分で見つけるのに苦労してしまったので、カテゴリを分けました。全部こっち都合ですみません…。。



 ブルースはガーゴイルの上で考えこんでいた。なぜ自分はあの男に必要以上に甘えてしまうのか。

クラーク・ケント。スーパーマン。

最初は単なる好奇心。あの大きな体を丸めて周囲に埋没しようとしている男が本当に世界から愛されるヒーローなのか、それが知りたかった。
大富豪の気紛れ探偵ごっこに付き合わせたのはレスリーよりも、レスリーに相談を持ちかけたレディがバットマンの活動を快く思わないからだ。いざとなればケント記者に調べさせたと言ってブルースは知らぬ存ぜぬ通すつもりだったのだが。
それだけのはずなのに骨は折れるし、黙っているつもりだったのに正体を知っているということをクラークに知られ、ブルースは世界最強の男の中の特別なポジションに置かれてしまったようだ。
そう、特別だ。世界でスーパーマンの正体を知る一握りの人々の仲間入りをした。
だがブルースはバットマンでもあり、そしてそれをクラークに告げるつもりはない。それとこれとは別だ。言えば彼は反対するだろうし、ブルースを軽蔑するかもしれない。
ふとブルースは不思議に思って、ほとんど瞑想の域に入っていた目を開けた。クラークに軽蔑される。だが、それが何だというのだ。彼は彼で、自分は自分だ。バットマンは誰からも好かれるものではなく、ブルース・ウェインだって軽薄な男なのだ。誰に嫌われたっていいではないか。

だが、ブルースは彼に甘えてしまう。それがわからない。

気持ちの整理がつかないのは、きっと――楽しかったからだ。
兄弟ごっこも昼間の下町も、出会った人々も。何もかもが軽薄な大富豪とも冷徹な夜の騎士とも対極にあって、クラークの手を離したらそのお祭り騒ぎが終わってしまう、そんな気がしたのだ。いや、今でもしている。

だから自分は彼に甘えてしまうのだろう。

ブルースは結論付けると、グラップルガンを手にガーゴイルから飛び立った。脳の一部はクラークに対する思考が騒ぎ立てているが、残りは恐ろしいほど澄んでいて、スウィングを重ねて銃声がした辺りまで行くだけなのに、街中の動きが手に取るようにわかる。ただの人間のブルースには見えるはずもない空間にジョーカーがいることが感じとれる。
着地と同時に狙撃されることを承知でブルースは宝石店の正面口に降り立った。
「やっとお出ましかよ。こんな色男を待たせるなんて罪なヤツだぜ」
「宝石泥棒とはまた平凡な犯罪だな、ジョーカー」
雨あられと降る銃弾には何故かリズムがある。ブルースが避けることを承知で、ジョーカーが遊んでいるのか。それとも時間稼ぎで別のことを企んでいるのか。
「平凡こそがもっとも非日常なのさ。お前もわかるだろ。スリルってのは何気ない時間に紛れ込んでこそだってな!」
咄嗟にブルースはケープを翻した。選択は正しかった。

全身に浴びせられたぬるりとした何かが一瞬で燃え上がる。耐熱温度よりまだ高いのか、燃えるというより溶け出すようなケープを捨てて、ブルースは屋上へと跳び退き、そして狙い定めた銃弾を打ち込まれる前に赤い光に攫われた。

「おいおい、俺様という男がありながら浮気とはいい度胸じゃねえか!」

ジョーカーの悲鳴は尾を引き、ブルースは己を宝石店からは少し離れた建物の屋根に下ろした男を睨み付けた。
「何のつもりだ」
「お節介だと思っても、君の腹に開く穴を減らしたんだから文句はいわないでほしいな」
低く唸るバットマンに、スーパーマンは眉を寄せ、あしらう様に手を振った。
「ならば礼もいわん」
ケープは失ったが好き放題しているジョーカーを放っておくわけにはいかない。ブルースはワイヤーを打ち込んで再びジョーカーの劇場に戻った。スーパーマンの視線が背中に張り付いている。先ほどまでの高揚はなく、ブルースはただひたすら冷徹にジョーカーを追い詰めた。
手下を失神させ、車は爆破、ジョーカー本人はいつものごとくワイヤーで吊り上げてやって、相変わらずの減らず口に拳を一発決めて、あとは警察にお任せというやつだ。
「……鮮やかといえば鮮やかだけど、君のやり方には賛成できないな」
ふわふわと降りてきた赤マントにも関節技をかけて足を払って転ばせる。
ブルースは機嫌を損ねたまま、ケイブへと戻った。 

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