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20080721
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 アルフレッドのご飯はおいしいということを脳内で補ってからお読みください(笑)

あんまり時間が無いので、他力本願で進めますです。はい。ごめんなさーい!

  スーパーマンでもクラーク・ケントでもない男はがっつくというほどでもないが、しかし執事が驚くような見事な食べっぷりで、巧妙に二人前にされていたフルコースを平らげた。
 救いはその一連の動作に気品があったことだろう。ゆっくりと食事をするブルースはただずっと優しい目でそれを見ていた。
 羨ましいとは思わない。確かにブルースは食事を制限しているが、ウェイン家における全能者アルフレッドは手間を惜しまず喜びをもたらす料理を出してくれる。食事に倦むことはない。
 だが食卓を供にする存在は執事といえど賄えない。特に気のおけない、好ましい人物は。
 だからブルースは自分がクラークに見惚れていることには気付いていなかった。ただほんのちょっとばかり、いつもとは違うことに喜んでいて、それだけだと自分では思っていた。
 クラークはどんどんとろけるような笑みの深くなるブルースに落ち着かず、ちょっとばかし浮いていた。
 ディナーが始まってから二人とも口を利いていない。
 ブルースは沈黙に満たされていたし、クラークは気の利いた話題が何もなかった。シミュレーションは頭をぐるぐると回るのだが、口にする前に、ブルースの甘やかな青暗色の目に、すべてを忘れ去ってしまう。
 デザートの前にアルフレッドがそろりとやってきて、ブルースに耳打ちした。
「すまない。友人から電話だ」
 ブルースは快活に立ち上がり、一瞬だけ叱られに行く前の子供のような顔をした。
「まさしく叱られに参られるのですよ」
 ブルースの背を目で追ったクラークに、アルフレッドは囁いた。
「えっと、誰からとか聞いてもいいのかな?」
「レスリー・トンプキンス様でございます。本日の探偵ごっこの依頼人でございますが、しかし危ないことはするなときつく言い置かれておられて」
 アルフレッドは珍しくにやっと笑い、クラークにアイスクリームを供した。
「バニラアイスとオレンジのシャーベットでございます」
「……あ~。私も一緒に叱られるべきかな?」
「さて。戻ってこられたところをお慰めになる方が、ポイントは高いと思われますが」
 すうっと背を向けるアルフレッドに、一人残されたクラークは震えた。
「……それってもしかしなくても、気づかれてますか…」
 なんでブルースに惚れてしまったんだろう…と坊ちゃまの前に立ちはだかる最も高そうなハードルの真意を測りかね、クラークはスプーンを銜えたまま悩んだ。

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