20080721
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フォックスさんはやはり必要です。
なんとなく、ぼったま始動…な予感ですが、タイトルはないです。あれ。
なんとなく、ぼったま始動…な予感ですが、タイトルはないです。あれ。
「やあブルース」
広間に入ると随分と馴染んだ様子で悪魔が座っていて、にこやかに手を挙げた。
白い髪に黒い肌、スーツはよく体に添い、エグゼクティブの風格を漂わせる。ただ表情だけが悪戯みがあり、初老であるのにまるで少年のようだ。
「……ルシアス。まだ帰れないのか?」
「何。地上の方が面白いからね。君が寝ている間にウェインの資産を増やしておいたから安心してくれたまえ」
ブルースは微苦笑を浮かべ、執事が音も無く入れてくれるコーヒーを受け取って、ソファに腰掛けた。
ルシアス・フォックスはジェットエンジンを爆発させて山を吹き飛ばし、地獄を追い出された悪魔だ。それ以外にも頑固な性格から色々あったようなのだが、ブルースには教えてくれない。
ふとある日気付けばウェイン産業の代表として入り込み、いろいろな発明品を世に送り出していたのだ。
意外にも執事と話が合うようで、それでブルースは彼が屋敷に出入りすることを許したのだが。
「そうだ!君が寝ている間に、君の左翼を作ってみたんだ!」
フォックスは立ち上がり、カップを持ったままのブルースの手を引っ張ってケイブに降りた。
「左翼って。ルシウス?」
「君の翼さ。二年前に君が落下してから、これはちゃんとした翼が必要だという結論に達して、開発を続けていたんだ」
君が落ちたとき、息が止まるかと思ったよ、とフォックスは笑う。二年前ブルースは旅行先でハンターに追われ、橋から落下した。損傷はひどく、彼は丸二年、回復のために深く眠りについたのだ。
「――つまり、もう一度飛べるように、なる?」
「そう。科学の力は偉大なのだよ。ブルース」
ブルースは白磁のように白い頬に血の気が上がるのを自分で感じた。
飛べる。
左翼をもがれたのはどれほど昔だろう。まだブルースは少年だった。緑の髪のハンターが笑いながらブルースを追い詰め、そして切り取っていったのだ。あのとき助けが入らなければブルースはばらばらに引き裂かれていただろう。
以来数百年。ブルースは飛べないし、外へ出ることも好まなくなった。
ブルースにはわからないが、彼には匂いがあるのだそうだ。それはクラークもフォックスも、一番近しい執事でさえも指摘することで、ブルースはどれほどの雑踏に息を潜めて紛れても、そこに高貴なものがいるのだと知れるのだと。まるで光がそこにあるかのように、目が惹きつけられる。
ブルースは自分が高貴だと表現されるのは納得がいかなかったが、自分のような純血の吸血鬼がもはや数えるほどしかおらず、故にハンターに狙われるということは理解していた。
父も母もハンターに意味もなく殺され、そして奪われていった。人間達にさえ疎まれるほど過激で狂気に満ちたハンターたちが何を考えているのかはわからないし、わかりたくもないのだが。
「もう一度飛べるなら、取り返せるかも知れない、な…」
引き裂かれ、無残な姿で奪われていった両親。もう一度二人を、取り戻せるなら。
「ルシアス。それは、どんな仕組みになっているんだ?」
科学を愛する悪魔に引き摺られるままになっていたブルースは身を乗り出し、そして暗い洞窟の奥へと消えた。
広間に入ると随分と馴染んだ様子で悪魔が座っていて、にこやかに手を挙げた。
白い髪に黒い肌、スーツはよく体に添い、エグゼクティブの風格を漂わせる。ただ表情だけが悪戯みがあり、初老であるのにまるで少年のようだ。
「……ルシアス。まだ帰れないのか?」
「何。地上の方が面白いからね。君が寝ている間にウェインの資産を増やしておいたから安心してくれたまえ」
ブルースは微苦笑を浮かべ、執事が音も無く入れてくれるコーヒーを受け取って、ソファに腰掛けた。
ルシアス・フォックスはジェットエンジンを爆発させて山を吹き飛ばし、地獄を追い出された悪魔だ。それ以外にも頑固な性格から色々あったようなのだが、ブルースには教えてくれない。
ふとある日気付けばウェイン産業の代表として入り込み、いろいろな発明品を世に送り出していたのだ。
意外にも執事と話が合うようで、それでブルースは彼が屋敷に出入りすることを許したのだが。
「そうだ!君が寝ている間に、君の左翼を作ってみたんだ!」
フォックスは立ち上がり、カップを持ったままのブルースの手を引っ張ってケイブに降りた。
「左翼って。ルシウス?」
「君の翼さ。二年前に君が落下してから、これはちゃんとした翼が必要だという結論に達して、開発を続けていたんだ」
君が落ちたとき、息が止まるかと思ったよ、とフォックスは笑う。二年前ブルースは旅行先でハンターに追われ、橋から落下した。損傷はひどく、彼は丸二年、回復のために深く眠りについたのだ。
「――つまり、もう一度飛べるように、なる?」
「そう。科学の力は偉大なのだよ。ブルース」
ブルースは白磁のように白い頬に血の気が上がるのを自分で感じた。
飛べる。
左翼をもがれたのはどれほど昔だろう。まだブルースは少年だった。緑の髪のハンターが笑いながらブルースを追い詰め、そして切り取っていったのだ。あのとき助けが入らなければブルースはばらばらに引き裂かれていただろう。
以来数百年。ブルースは飛べないし、外へ出ることも好まなくなった。
ブルースにはわからないが、彼には匂いがあるのだそうだ。それはクラークもフォックスも、一番近しい執事でさえも指摘することで、ブルースはどれほどの雑踏に息を潜めて紛れても、そこに高貴なものがいるのだと知れるのだと。まるで光がそこにあるかのように、目が惹きつけられる。
ブルースは自分が高貴だと表現されるのは納得がいかなかったが、自分のような純血の吸血鬼がもはや数えるほどしかおらず、故にハンターに狙われるということは理解していた。
父も母もハンターに意味もなく殺され、そして奪われていった。人間達にさえ疎まれるほど過激で狂気に満ちたハンターたちが何を考えているのかはわからないし、わかりたくもないのだが。
「もう一度飛べるなら、取り返せるかも知れない、な…」
引き裂かれ、無残な姿で奪われていった両親。もう一度二人を、取り戻せるなら。
「ルシアス。それは、どんな仕組みになっているんだ?」
科学を愛する悪魔に引き摺られるままになっていたブルースは身を乗り出し、そして暗い洞窟の奥へと消えた。
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