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チャットで盛り上がったネタ全部いれようとしたら2時間ドラマでも作れるような気がしますので、自分の妄想と手(肩凝り)の妥協点でぼちぼちやっていきたいと思います。
ぼったまとクラークとゴードンさんが全員吸血鬼って話だったのですが、ぼったまがバットマンでないのはダメとか、そんな感じのパラレルお嫌いな方はご遠慮くださいませ。よろしくお願いします。
傾向はやはりクラブルですが、相変わらずぼったまは箱入りです。
目を開けるとまあるい月が私を見下ろしていた。
――クラーク。
あまりにも月が、太陽の力を含みすぎて、火傷しそうだ。随分と長い間眠っていたから体は冷え切っている。青白い私の手。闇を這うものの色だ。
「アルフレッド…」
呟くと、影はゆらめく霧のように部屋の隅に集まった。
「お目覚めでございますか。ブルース様」
「どれぐらい眠っていた?」
「そうですね。二年ほどでしょうか」
「いつもよりは早く目覚めたのだな…」
見渡す室内は二年前と何も変わっていない。アルフレッドさえも、彼は幽霊だから年を経ることもなく、ただこの邸と私とを見守っていてくれる。
「お体の調子はいかがでございましょう?」
アルフレッドは心配げに首を傾げたが、私は特に不調を感じなかった。
「いいみたいだ。――そうだな、茶を入れてくれるか?」
私がベッドから出るのと、その影が飛び込んでくるのはほぼ同時だった。
「ブルース!」
「…クラーク…」
ぎゅうと抱きしめられて、相変わらずこの男が私を想っていることを知る。
「おはよう。君が目覚めていてくれて、それだけで僕は幸せだ」
にっこりとまるで太陽の欠片ででもあるかのように明るく笑う。クラークは変異種だ。吸血鬼のくせに、太陽の下で人間と変わらず活動できる。それどころか、人を傷つけることなく生気だけを分けてもらって生きていける。血を吸わなくてもいいなら、こんな業の深い邸など忘れ去ってしまえばいいものを。
「ブルース」
クラークが艶を含んだ声で囁く。アルフレッドが黙って霧散する。目の前に差し出された首筋に、私は唇を噛んだ。
「――いらない」
「ダメだよ。飲んで。ただでさえ体力が落ちているんだから」
クラークは己の指を噛み切ると、血の滲むそれを私の口に突っ込んだ。
甘い。
くらくらとするほどの甘さが口の中に広がる。同属の血は本来飲まないが、クラークだけは別だ。舌が傷口に触れれば酩酊するように腰が砕けた。
「そう、いい子だね。ブルース」
じわりと滲む血を啜る。音が遠ざかる。体の感覚も遠くなり、ただ私はクラークの指をしゃぶり、寝台に崩れ落ちた。
血など欲しくない。クラークのだろうが、誰のだろうが、私は血など欲しくないし、なくても生きていけるというのに。
もう目を開けることさえ億劫になった私の髪に指を差し込んで梳き、クラークは口付けをしてきた。
「…い、や…だ」
「何が。キスが?それとも血を飲むのが?」
クラークが笑うのを感じる。どちらも嫌だ。温かさを感じれば自分の熱量のなさを自覚する。
「愛しているよ。ブルース」
もうクラークの声も遠い。膜を張ったように外界の音は聞き取りにくく、そして内側でクラークの血が駆け巡っている。力が隅々まで行き渡る。私の常にはゆっくりとした鼓動さえ、このときばかりは早鐘のように響く。
私は血を飲まなくても生きていける。
ただ眠る時間が長くなるだけだ。それでも誰かの命を奪うよりずっといい。クラークはそれを聞いてくれない。だから――。
「…君なんか、きらいだ…」
「――嫌いでもいいから、僕を捨てないで」
クラークが睦言のように甘く、余裕のある声で囁き、私は考えることをやめ、今一度の暖かな眠りに身を投げ出した。