20080721
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
続いてしまいました。
実は先に3を書いてあるのですが、どうにも3の冒頭に繋がりませんでした。この調子では4でも終わらない気がします。
ぼっちゃんと新聞記者の探偵ごっこ。萌えは、ないかと思います。。
実は先に3を書いてあるのですが、どうにも3の冒頭に繋がりませんでした。この調子では4でも終わらない気がします。
ぼっちゃんと新聞記者の探偵ごっこ。萌えは、ないかと思います。。
「兄弟…、へえ。義理の?」
そう言われれば僕らは似ているらしかった。
そう言われれば僕らは似ているらしかった。
どちらも長身で黒髪、年も同じだ。ブルースは着痩せする質でほっそりとして見えるが、それは逆に弟という設定を納得させるものであったようだ。
そのドアを開けてくれた老婦人は二十分ばかりこの地区の治安の悪さを愚痴ったが、実母の情報を掴めなかったブルースを労るように腕を叩いた。そしてその兄には眉をひそめ。
野暮ったいスーツを着た、眼鏡の大男。とうに成人した弟を心配して付いてくるなんて過保護だと思われただろうか。それとも二十五年も前のことを掘り返すなんて胡散臭いと?
ブルースは今日、二十五歳という設定だったが、前髪を乱すだけで十分通用する艶のある頬だ。普段落ち着いて見えるのは巨大企業がもたらす眉間の深刻さのせいだろうか。
「ジェシィ」
”弟”を呼ぶと、ブルースは名残惜しそうに老婦人と別れた。
「助かった」
階段を下りたブルースが息をつく。ちらりと私をみて、悪戯っぽく目を細めた。
「永遠に帰れないかと思った」
「ずいぶん気に入られていたから兄さんは心配したよ」
真面目な顔で茶化すと、困ったような顔でブルースは私の腕に触れた。感情を努めて表に出そうとして見えるのは、気のせいなのか。彼は少し無理にはしゃいでいる観さえある。
「疲れた?」
「いいや。でも、本当は何を探しているのかなって」
この街はあんまりにも静かだ。昼間だというのに人通りがない。たまに見かける少年たちは無気力に座り込んでいる。しかし犯罪が多発しているようには、少なくともゴッサムほどの治安の悪さは感じられない。
そう、少し寂れた町、旧市街そんな具合だ。家々のペンキは剥げているし、ストリートに面した商店の大半は閉まっている。それでも荒々しさはなかった。
そう、少し寂れた町、旧市街そんな具合だ。家々のペンキは剥げているし、ストリートに面した商店の大半は閉まっている。それでも荒々しさはなかった。
「あのパブに入ろうか」
ペンキのはげた看板をブルースは指で示し、先に歩き出した。店内は外観とは違い清潔だったが、店主はアイリッシュではなく厳つい黒人だった。
「アイリッシュ・パブなんだ?」
店内を見渡したブルースが問うと、その店主はにやりと笑った。年は四十を過ぎた頃だろうか。二の腕には筋肉が盛り上がり、用心棒など心配要らなさそうだ。店内には数人の地元の人間らしい客がおり、サンドイッチなどを食べていた。
「アイリッシュの親父に気に入られてね、店を引き継いだのさ」
「へえ。そういうのいいね。俺はジェシィ。こっちはマーク。兄貴なんだ」
急にマークと名づけられた私は慌てて店主に手を差し出し、ぎこちなくブルースの隣に座った。
「ジェシイか。俺はジェフリー。そっちはなんかお堅そうな兄貴だな」
そう、とブルースが小首を傾げる。確かにふわふわした、笑顔もおっとりとした弟からすれば、私のスーツはあんまりにも愚直かも知れない。しかし新聞社からそのまま連れてこられたのだから仕方が無いだろう。
クラーク・ケントは野暮ったい猫背の目立たない男なのだ。
「マークは新聞記者なんだ」
ブルースがにこっとして言うと、パブの空気は凍りついた。
「何を調べに来たんだ?」
店主は穏やかな声さえ変化はないが、目が剣呑だ。だがブルースはまったく気づいていないように、ううんとためらいの声を発した。手が袖口を弄る。
「実は俺、養子なんだ。それで本当のお母さんが昔この辺りに住んでいたらしくってさ」
「彼女、キャスリーンっていうんだ。キャスかキャシーかも知れない」
私が口添えすると、店主は緊張を解いた。私たちにギネスのジョッキをドンと出し、そして店の奥を指差した。
「俺は古いことはあんまり知らねえが、前の親父のときからの常連ならあそこに座ってるぜ」
黒くなった梁からたくさんのジョッキがぶら下がっている。その影に彼女は座っていた。ブルース二人分ぐらいありそうな贅肉に沈む老婦人。
横を見るとブルースは「またおばあちゃんか」という風に悲しげな目をしていた。
店内を見渡したブルースが問うと、その店主はにやりと笑った。年は四十を過ぎた頃だろうか。二の腕には筋肉が盛り上がり、用心棒など心配要らなさそうだ。店内には数人の地元の人間らしい客がおり、サンドイッチなどを食べていた。
「アイリッシュの親父に気に入られてね、店を引き継いだのさ」
「へえ。そういうのいいね。俺はジェシィ。こっちはマーク。兄貴なんだ」
急にマークと名づけられた私は慌てて店主に手を差し出し、ぎこちなくブルースの隣に座った。
「ジェシイか。俺はジェフリー。そっちはなんかお堅そうな兄貴だな」
そう、とブルースが小首を傾げる。確かにふわふわした、笑顔もおっとりとした弟からすれば、私のスーツはあんまりにも愚直かも知れない。しかし新聞社からそのまま連れてこられたのだから仕方が無いだろう。
クラーク・ケントは野暮ったい猫背の目立たない男なのだ。
「マークは新聞記者なんだ」
ブルースがにこっとして言うと、パブの空気は凍りついた。
「何を調べに来たんだ?」
店主は穏やかな声さえ変化はないが、目が剣呑だ。だがブルースはまったく気づいていないように、ううんとためらいの声を発した。手が袖口を弄る。
「実は俺、養子なんだ。それで本当のお母さんが昔この辺りに住んでいたらしくってさ」
「彼女、キャスリーンっていうんだ。キャスかキャシーかも知れない」
私が口添えすると、店主は緊張を解いた。私たちにギネスのジョッキをドンと出し、そして店の奥を指差した。
「俺は古いことはあんまり知らねえが、前の親父のときからの常連ならあそこに座ってるぜ」
黒くなった梁からたくさんのジョッキがぶら下がっている。その影に彼女は座っていた。ブルース二人分ぐらいありそうな贅肉に沈む老婦人。
横を見るとブルースは「またおばあちゃんか」という風に悲しげな目をしていた。
PR
この記事にコメントする