20080721
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TDKと出戻り超人(黒配合)で、監督が存在しないと言おうとも、この対決みたい!という腐魂の方が勝ちますよ。 TDK→リターンズの流れになってます。他の小話とは繋がっていません。
あーと、前からですが、名前の表記はわたしが好きだというだけでコミック準拠になっています。
あーと、前からですが、名前の表記はわたしが好きだというだけでコミック準拠になっています。
「フォックス」
ウェイン・テックの社長室に滑り込んできたブルース・ウェインはお腹がすいた子犬よりも眉を下げて、らしくなくおどおどしていた。
「会長?」
書類に目を通していたルシアス・フォックスは眼鏡をずらして、立ち上がった。
「どうしました?」
「その、私はあの事件の後から夜の散歩については何も頼まないつもりだったんだが――」
言いよどむのをソファに招いて促す。 あの事件とはジョーカーがゴッサムを大混乱に陥れたあの日のことだ。フォックスは確かに「最後の仕事」と言った。希望通り装置が破壊されたので退職はしていない。
だがブルースがバットマンの装備についての仕事を頼んでくることはなくなった。ポッドもなくなって不便をしているだろうにだ。
ブルースは不安げな顔のまま、小首を傾げた。
「……完全に心音を遮断するようなことが、出来ないか?」
「何のために?」
フォックスは真顔で問い返した。
心音を遮断といっても防音室に閉じこもりたいのか、それともそういうスーツを求めているのか。何をしたいのかさっぱりわからない。
「――世界最悪のストーカーから逃げるために、だ」
ブルースは抑えた声ながらきっぱりといい、それからフォックスの後ろを指差した。
振り返った窓の外には口をぱくぱくさせて何かを叫んでいる赤と青のコスチュームの男が浮いていて、フォックスは手に持った眼鏡を落とした。その拍子にスーパーマンの姿が消える。
「……坊ちゃん」
「ひどいよブルース!」
「気安く名前を呼ぶな!」
動揺するフォックスの前ではスーパーマンに羽交い絞めにされた上に頬ずりされ、毛を逆立てた猫のようなブルースがもがいている。
とりあえずフォックスは眼鏡を拾った。
スーパーマン。一度世間から消えて、つい先日戻ってきた世界に最も愛されるヒーローだ。どうやって飛んでいるんだとかフォックスとしては興味が尽きない対象でもあるが、しかしこの状況はどうしたことだ。坊ちゃんを、坊ちゃんが――。
「坊ちゃん!」
「わぁ!」
不意に叫んだフォックスにブルースが飛び上がる。とはいえ元から足は地についていなかったので、超人はそっと下ろしてやった。
「何ですかこの状況は?」
「それは私が聞きたいぐらいだ。ここ数日、この史上最悪のストーカーが現れてずっとついてくるんだ」
貴様、世界を救いに行け!とブルースが足で蹴り、痛くも痒くも無い超人は構ってもらえたことが嬉しいのかにこにこしている。
「大丈夫だよ。今はそんなに大事件も起こってないし」
愛しそうにブルースを見る超人の眼差しにフォックスは何故かいらっとした。夜の自警活動から手を引いたとはいえ、今まで大事に育ててきた坊ちゃんだ。アルフレッドが注ぐような皮肉と愛情が混じったそれではなく、欲望がだだ漏れの眼差しになぜ坊ちゃんは気づかないのだ!
フォックスは深呼吸をして自分を落ち着かせると、ブルースと超人の間を割ってそれぞれをソファに座らせた。
「で、一体全体どういうことなんですか。これは」
「痴漢だ」
「ひどいなブルース。傷つくよ」
ブルースに指を指されたスーパーマンが苦く笑う。
「出会い頭にカウルを透視したんだ、こいつは!」
「それは間違いなく、ジョーカーに殺されますね」
つい先日アメリカを水没から救ったスーパーヒーローを冷たい目で見据えて、フォックスは引き出しを開けた。
坊ちゃんのカウルに鉛を入れてやらなかったなんて何という失態。
「昼も夜も、黙っていても私を見つけてどこからか飛んでくるんだ」
「ブルースの鼓動を聞いているだけだよ。心配なんだ。特に夜は」
「それがストーカーだと言っているんだ。鬱陶しい!」
「そういえば、普通にこの部屋に入ってきましたね」
フォックスは自分もブルースの夜の顔を知っていると言う前提で話すスーパーマンに強い違和感を覚えた。不審と言ってもいい。
ジョーカーとトゥーフェイスの事件のあと、フォックスが裏方から手を引いた後に、彼は地球に帰ってきたというのにだ。
「だってさっき「夜の散歩」って言っていたでしょう?」
スーパーマンがにこやかに答えるが、それを世間では盗み聞きという。
フォックスは引き出しの奥深くから鉛の小箱を取り出すと、すばやく蓋を開け、緑色の光にへたり込んだ超人を窓から投げ捨てた。
「……クリプトナイトなんて持っていたのか…」
ブルースが呆然と呟く。
「早急に装備を改善しましょう!まずはアルフレッドに連絡しなくては」
ルシアスはスーツの乱れた襟を正すと、ブルースの手に小箱を押し付け、颯爽と部屋を出て行った。
ブルースはしばらくソファで呆然としていたが、どうやらフォックスが辞意を翻したらしいということに気づいて、口元を緩めた。
窓の外でしょぼんとしている男には気づかない振りで。
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どちらで拝見したか忘れてしまいましたが、「ルシえもん」の呼称はまったくもって正しいと思います(笑)
ウェイン・テックの社長室に滑り込んできたブルース・ウェインはお腹がすいた子犬よりも眉を下げて、らしくなくおどおどしていた。
「会長?」
書類に目を通していたルシアス・フォックスは眼鏡をずらして、立ち上がった。
「どうしました?」
「その、私はあの事件の後から夜の散歩については何も頼まないつもりだったんだが――」
言いよどむのをソファに招いて促す。 あの事件とはジョーカーがゴッサムを大混乱に陥れたあの日のことだ。フォックスは確かに「最後の仕事」と言った。希望通り装置が破壊されたので退職はしていない。
だがブルースがバットマンの装備についての仕事を頼んでくることはなくなった。ポッドもなくなって不便をしているだろうにだ。
ブルースは不安げな顔のまま、小首を傾げた。
「……完全に心音を遮断するようなことが、出来ないか?」
「何のために?」
フォックスは真顔で問い返した。
心音を遮断といっても防音室に閉じこもりたいのか、それともそういうスーツを求めているのか。何をしたいのかさっぱりわからない。
「――世界最悪のストーカーから逃げるために、だ」
ブルースは抑えた声ながらきっぱりといい、それからフォックスの後ろを指差した。
振り返った窓の外には口をぱくぱくさせて何かを叫んでいる赤と青のコスチュームの男が浮いていて、フォックスは手に持った眼鏡を落とした。その拍子にスーパーマンの姿が消える。
「……坊ちゃん」
「ひどいよブルース!」
「気安く名前を呼ぶな!」
動揺するフォックスの前ではスーパーマンに羽交い絞めにされた上に頬ずりされ、毛を逆立てた猫のようなブルースがもがいている。
とりあえずフォックスは眼鏡を拾った。
スーパーマン。一度世間から消えて、つい先日戻ってきた世界に最も愛されるヒーローだ。どうやって飛んでいるんだとかフォックスとしては興味が尽きない対象でもあるが、しかしこの状況はどうしたことだ。坊ちゃんを、坊ちゃんが――。
「坊ちゃん!」
「わぁ!」
不意に叫んだフォックスにブルースが飛び上がる。とはいえ元から足は地についていなかったので、超人はそっと下ろしてやった。
「何ですかこの状況は?」
「それは私が聞きたいぐらいだ。ここ数日、この史上最悪のストーカーが現れてずっとついてくるんだ」
貴様、世界を救いに行け!とブルースが足で蹴り、痛くも痒くも無い超人は構ってもらえたことが嬉しいのかにこにこしている。
「大丈夫だよ。今はそんなに大事件も起こってないし」
愛しそうにブルースを見る超人の眼差しにフォックスは何故かいらっとした。夜の自警活動から手を引いたとはいえ、今まで大事に育ててきた坊ちゃんだ。アルフレッドが注ぐような皮肉と愛情が混じったそれではなく、欲望がだだ漏れの眼差しになぜ坊ちゃんは気づかないのだ!
フォックスは深呼吸をして自分を落ち着かせると、ブルースと超人の間を割ってそれぞれをソファに座らせた。
「で、一体全体どういうことなんですか。これは」
「痴漢だ」
「ひどいなブルース。傷つくよ」
ブルースに指を指されたスーパーマンが苦く笑う。
「出会い頭にカウルを透視したんだ、こいつは!」
「それは間違いなく、ジョーカーに殺されますね」
つい先日アメリカを水没から救ったスーパーヒーローを冷たい目で見据えて、フォックスは引き出しを開けた。
坊ちゃんのカウルに鉛を入れてやらなかったなんて何という失態。
「昼も夜も、黙っていても私を見つけてどこからか飛んでくるんだ」
「ブルースの鼓動を聞いているだけだよ。心配なんだ。特に夜は」
「それがストーカーだと言っているんだ。鬱陶しい!」
「そういえば、普通にこの部屋に入ってきましたね」
フォックスは自分もブルースの夜の顔を知っていると言う前提で話すスーパーマンに強い違和感を覚えた。不審と言ってもいい。
ジョーカーとトゥーフェイスの事件のあと、フォックスが裏方から手を引いた後に、彼は地球に帰ってきたというのにだ。
「だってさっき「夜の散歩」って言っていたでしょう?」
スーパーマンがにこやかに答えるが、それを世間では盗み聞きという。
フォックスは引き出しの奥深くから鉛の小箱を取り出すと、すばやく蓋を開け、緑色の光にへたり込んだ超人を窓から投げ捨てた。
「……クリプトナイトなんて持っていたのか…」
ブルースが呆然と呟く。
「早急に装備を改善しましょう!まずはアルフレッドに連絡しなくては」
ルシアスはスーツの乱れた襟を正すと、ブルースの手に小箱を押し付け、颯爽と部屋を出て行った。
ブルースはしばらくソファで呆然としていたが、どうやらフォックスが辞意を翻したらしいということに気づいて、口元を緩めた。
窓の外でしょぼんとしている男には気づかない振りで。
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どちらで拝見したか忘れてしまいましたが、「ルシえもん」の呼称はまったくもって正しいと思います(笑)
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