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勝負最中で中断していますが、次男三男で何かネタを考えていた気がするので、思い出したら書きます。
でも今日は変則的に、足音告げるのその何年か後、です。クラブルで、オリキャラでます。
(読みきりではないです)
「ブルース様」
執事が珍しく、やや困惑したように差し出した茶色い小包を受け取り、ブルースは小首を傾げた。
「差出はエリック・カークか。……たしか、メッシン・ダウエル社の副社長、だな?」
小包を開けると今度は黒い包装紙でラッピングされた小箱が入っている。
添えられたカードには短く、”ブルース・ウェインへ”とだけ。筆記体で印字されていて、特に飾り気はない。
「さようで。どこかでお会いになられましたか?」
アルフレッドの視線は二番目にダンボール箱の中から現れた、愛らしいピンクの包装紙に向けられている。
どうみても地位ある大人の男が、初対面の大人の男に送ってくるものではない。
「ない。…ないと思う。――クラーク?」
ピンクの包み紙にはオレンジのリボンの巻かれ、そちらには
”クラーク・ケントへ”
と添えられていた。
「どういうことだ?」
ゴッサムの大富豪と平凡な新聞記者、そんな二人につながりなどあるはずもなく、かといって、夜の顔を知るものなどいないはずだ。ブルースは厳しい顔つきで拳を口元に当てた。
「ブルース様」
アルフレッドが空になったダンボール箱の底から取り上げたのは、ちいさなちいさな手紙で、
『いまからあそびにいく』
と、日本語で書かれていた。
「日本語のひらがなだ」
「私が心得ましたひらがなとはまた違うような気がいたしますが」
アルフレッドがいうのは活字のことで、そう指摘されればこれは、子供が書いた字のようにいびつだった。
「しかし、今から遊びに行く、と言われても」
「お出でになるならばお茶の用意などいたしましょう」
アルフレッドは一人頷くと、キッチンへと去っていった。取り残されたブルースはとりあえず自分に宛てられた包み紙を開け、そして中から現れたチョコレートに途方に暮れた。
整然と並んだ、ゴディバ・スパークリングショコラ。
「ブルース様、お電話でございます」
立ち尽くすブルースを見ていたかのように電話の相手はチョコレートの贈り主で、ブルースは演技することも忘れて、問い詰めた。
「何故わたしに贈り物を?」
『ちょうど先月日本に行っていたんだが、君バレンタインデーが日本でどんなイベントになっているか知っているかい?』
「チョコレートを贈る風習は知っていますが、しかし何故わたしに?どこかでお会いしましたか?」
電話越しに喉の奥で笑う振動が伝わり、ブルースは頬を染めた。陽気な若様らしくこの悪戯を笑って流すべきだっただろうか。
『チョコが口の中で弾けるんだ。そういう面白いものが好きなんじゃないかと思ってね。職人の技術だよ』
確かにそういうものが好きだったブルースは黙り込んだ。あらゆる分野での新しい技術に興味がある。
『……わたしの姪がもうそろそろ君の邸に着く頃だから歓待してやってくれないか。粗略に扱うとあとが怖いぞ。随分と君たちのことが気に入ったようで』
「姪?」
『――君たちには秘密がある。だから遊びに行くことを許可した。まあ、彼女が本気で望めば私に止めることなど出来ないのだが。……我々にも秘密がある。だから余計な詮索はお互いしないでおこうじゃないか』
低い笑い声がし、そして電話は一方的に切れ、代わりに門のセンサーが鳴った。モニターには黒塗りの小型車が映っている。アルフレッドが門を開けると、車はゆっくりと敷地内に滑り込んだ。
「ブルース様。たいへん小さなお嬢様がお一人でお見えでございます」
運転手は外で待つことにしたらしく、6歳ほどの少女が乳母も連れず、一人で玄関ホールに立っていた。
「あそびにきた」
「ああ。ミスタ・カークから聞いたよ、お小さい人。――君は、リズだ」
少女はにっこりと笑い、そして告げた。
「あの男が来る。もうすぐ、……ほら、来た」
よれたスーツで現れたクラーク・ケントに、少女は瑞歯をこぼして笑った。
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…続きます。