20080721
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
オリキャラ多数ですが、……いや、オリキャラ多数という以外に言い訳が無いです。はい。すみません。
社主と記者の初対面もの。好きなんです初対面。
社主と記者の初対面もの。好きなんです初対面。
メトロポリスの空港で、来るはずの迎えが来ないことに戸惑いながら、ブルースは待合のソファに腰掛けていた。デイリープラネットを買い上げ、ついでにメトロポリスの街を見たいと思ったのが間違いだっただろうか。
いつものように自家用ヘリで来れば良かったのかも知れない。だが空港というのは街の玄関だ。
デイリープラネットの編集方針に口を出す気はないが、しかしその街も知らないで看板紙を買い上げるのは主義に反する。
ガラスの向こう側、遠巻きにした人々からは何やら囁きも聞こえるが、VIP用なので一般客は入ってこられない。時間があるなら事件資料でも読みたいところだが、こうも好奇心に囲まれているとそういうわけにもいかないな、とブルースは傍らに並べてあるインテリア雑誌に手を伸ばそうとし、そしてその童女に気付いた。
黒髪は肩まで、瞳は黒く、アジア系だろう。しかしビスクドールのように繊細で、作り物めいている。
質素なデザインだが上等の衣服を身に着けていて、そして周りには誰もいなかった。両親も乳母もだ。
「……一人なのかい?」
なぜ声をかけたのかはわからない。子供は嫌いでもないが、得意ではない。しかも年の頃は5,6歳といったところだろう。いかにプレイボーイの大富豪といえども守備範囲外だ。
童女はブルースに顔を向けると、ガラス球のような深遠な目でじっと見つめた。
「お前の待ち人はもうすぐ来る」
「え?」
声音は稚いが、大人びた、やや尊大な口調だった。彼女の周りの大人がそういう口調なのかも知れない。
驚くブルースを見たまま、童女は重ねて告げた。
「あと少し。彼はお前の運命をまわすが、今ではない。――ほら、扉が開くぞ」
「ウェインさん!」
駆け込んできたのは眼鏡の大男。ブルースと同じぐらいか、あるいはわずかに高いかも知れない。猫背なのにやたらと胸が厚く、それも気に入らない。背筋を伸ばせばよほど人の目を惹く存在になれように。
「君が迎えなのかな?」
「ええ、はい。遅れて申し訳ありません。デイリー・プラネット紙のクラーク・ケントです」
差し出された手は握手を求めてではなく、ブルースに起立を促している。肉厚の大きな手で、傷ひとつない美しい形をしている。ブルースはふとギリシア彫刻に対するときのように触れたくなり、自制に眉を寄せた。
「あ、すみません。レーン記者は取材先から戻る途中で事故に遭遇しまして、お迎えに来られなかったのです」
ブルースが気を害したと思ったケントが眉を寄せる。ブルースはいや、と否定し、そして童女が消えたことに気づいた。
「――エリック」
稚い声が背後でし、振り返った先にはすらりとした美しい男が彼女を抱き上げるところだった。
「やれやれ。やっと荷物が出てきた。やはり民間機になんて乗るものではないな」
ぼやく男が童女を見つめるブルースに気づき、そして目を細めた。
「わたしの姪がご迷惑を?」
「…いや、随分大人びているので驚いただけで」
「今ではないぞ」
童女は男の首につかまったまま、ブルースに再び告げた。
「その男だ。だが今ではない」
「やめなさい。リズ」
彼女は男に窘められて黙ったが、それでも黒い目でブルースの傍らに立つ猫背の男を射抜いた。
「そしてお前の欲しいものをくれる男だ」
「これ以上失礼しないうちに退散するよ」
男は童女を連れ去り、ブルースとケント記者は立ち尽くした。
「……お知り合い、ではないのですよね?」
「初対面だ。あの男はどこかで見た気もするが」
「僕の欲しいものを、あなたがくださるんですか、ウェインさん」
「さあ。君の欲しいものなど知らないし、あのoracleを信じるなら君はわたしにとって待ち人らしいが」
案内してくれないのかね、と目を細めて見上げると(やはり彼の方がわずかに背が高いらしい)、ケントは視線を彷徨わせた。ごほごほと咳払いをしてから、ブルースの荷物を手に取るがやや耳が赤いのはどうしたことか。
「失礼いたしました。社までご案内します。社主」
そうして歩き出した二人だが、ブルースがその託宣の意味の半分を知るのは数日後の夜のこと、孤独なケント記者が意味を理解したのはさらに数年後のことだった。
------------------------------
「ねえ覚えているかい、ブルース。あの子の言ってたこと」、とか睦言に囁いてくれればいいのに…。
いつものように自家用ヘリで来れば良かったのかも知れない。だが空港というのは街の玄関だ。
デイリープラネットの編集方針に口を出す気はないが、しかしその街も知らないで看板紙を買い上げるのは主義に反する。
ガラスの向こう側、遠巻きにした人々からは何やら囁きも聞こえるが、VIP用なので一般客は入ってこられない。時間があるなら事件資料でも読みたいところだが、こうも好奇心に囲まれているとそういうわけにもいかないな、とブルースは傍らに並べてあるインテリア雑誌に手を伸ばそうとし、そしてその童女に気付いた。
黒髪は肩まで、瞳は黒く、アジア系だろう。しかしビスクドールのように繊細で、作り物めいている。
質素なデザインだが上等の衣服を身に着けていて、そして周りには誰もいなかった。両親も乳母もだ。
「……一人なのかい?」
なぜ声をかけたのかはわからない。子供は嫌いでもないが、得意ではない。しかも年の頃は5,6歳といったところだろう。いかにプレイボーイの大富豪といえども守備範囲外だ。
童女はブルースに顔を向けると、ガラス球のような深遠な目でじっと見つめた。
「お前の待ち人はもうすぐ来る」
「え?」
声音は稚いが、大人びた、やや尊大な口調だった。彼女の周りの大人がそういう口調なのかも知れない。
驚くブルースを見たまま、童女は重ねて告げた。
「あと少し。彼はお前の運命をまわすが、今ではない。――ほら、扉が開くぞ」
「ウェインさん!」
駆け込んできたのは眼鏡の大男。ブルースと同じぐらいか、あるいはわずかに高いかも知れない。猫背なのにやたらと胸が厚く、それも気に入らない。背筋を伸ばせばよほど人の目を惹く存在になれように。
「君が迎えなのかな?」
「ええ、はい。遅れて申し訳ありません。デイリー・プラネット紙のクラーク・ケントです」
差し出された手は握手を求めてではなく、ブルースに起立を促している。肉厚の大きな手で、傷ひとつない美しい形をしている。ブルースはふとギリシア彫刻に対するときのように触れたくなり、自制に眉を寄せた。
「あ、すみません。レーン記者は取材先から戻る途中で事故に遭遇しまして、お迎えに来られなかったのです」
ブルースが気を害したと思ったケントが眉を寄せる。ブルースはいや、と否定し、そして童女が消えたことに気づいた。
「――エリック」
稚い声が背後でし、振り返った先にはすらりとした美しい男が彼女を抱き上げるところだった。
「やれやれ。やっと荷物が出てきた。やはり民間機になんて乗るものではないな」
ぼやく男が童女を見つめるブルースに気づき、そして目を細めた。
「わたしの姪がご迷惑を?」
「…いや、随分大人びているので驚いただけで」
「今ではないぞ」
童女は男の首につかまったまま、ブルースに再び告げた。
「その男だ。だが今ではない」
「やめなさい。リズ」
彼女は男に窘められて黙ったが、それでも黒い目でブルースの傍らに立つ猫背の男を射抜いた。
「そしてお前の欲しいものをくれる男だ」
「これ以上失礼しないうちに退散するよ」
男は童女を連れ去り、ブルースとケント記者は立ち尽くした。
「……お知り合い、ではないのですよね?」
「初対面だ。あの男はどこかで見た気もするが」
「僕の欲しいものを、あなたがくださるんですか、ウェインさん」
「さあ。君の欲しいものなど知らないし、あのoracleを信じるなら君はわたしにとって待ち人らしいが」
案内してくれないのかね、と目を細めて見上げると(やはり彼の方がわずかに背が高いらしい)、ケントは視線を彷徨わせた。ごほごほと咳払いをしてから、ブルースの荷物を手に取るがやや耳が赤いのはどうしたことか。
「失礼いたしました。社までご案内します。社主」
そうして歩き出した二人だが、ブルースがその託宣の意味の半分を知るのは数日後の夜のこと、孤独なケント記者が意味を理解したのはさらに数年後のことだった。
------------------------------
「ねえ覚えているかい、ブルース。あの子の言ってたこと」、とか睦言に囁いてくれればいいのに…。
PR
この記事にコメントする