20080721
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随分間が開きましたが、続きです。
クリスマスだろうが何だろうが普通に働いている皆様に、よい日でありますように。
とか言って、下の本文はたわいもない話なのですが。クラ→ブルです。アルフレッドはわかってんだかわかってないんだか。曲者ですから。
クリスマスだろうが何だろうが普通に働いている皆様に、よい日でありますように。
とか言って、下の本文はたわいもない話なのですが。クラ→ブルです。アルフレッドはわかってんだかわかってないんだか。曲者ですから。
ブルースは骨折から発熱し、早めに就寝することとなったのだが、何だかんだとアルフレッドに駄々をこね、クラークが気づくと、ブルースの寝室に簡易ベッドが運ばれていた。
「では申し訳ございませんが、うちの坊ちゃまが寝付くまで相手をしてやっていただけますか」
アルフレッドが頭を下げ、クラークは慌てて首を振った。
「そんな気になさらないでください。わざわざベッドなんて入れていただかなくても、ソファでも大丈夫ですし、そもそもあんまり寝なくても平気なんで!」
「ケント君、歯は磨いたか?」
ブルースの横槍に執事がクラークを洗面所に案内する。クラークが歯を磨いている間に、執事は若主人を叱りつけた。
「ケント様は坊ちゃまのおもちゃではないのですからね、ちゃんと明日の仕事に支障がないように睡眠をとって頂いて、坊ちゃまもこれ以上悪化しないようにおとなしくベッドに収まっているのですよ。夜遊びはいけません」
「今日は何も”イベント”がないから大丈夫だろう。ゴッサムも静かなものさ」
「”舞踏会の仮面”も手直しをしなくてはなりません。”同伴者”をどうなさるか、よくお考えください」
わかった、と頷いてブルースは鼻までシーツを被った。クラークにと出してきた簡易ベッドは少し離れたところに置かれたが、それだけでわくわくとする。子供の頃に聞いたキャンプはこういうものかも知れない。
「具合はどうですか、ミスタ?」
「ブルースでいいぞ、ケント君」
戻ってきたクラークは洗面所で服も着替えて、コットンの上下というラフな姿だった。伊達眼鏡はなく、前髪も掻きあげている。それは確かにスーパーマンだが、誰もが知るスーパーマンではなかった。
「お休みなさいませ、旦那様、ケント様」
おやすみ、と二人同時に返し、互いの顔を見合わせて吹き出す。その瞬間まで同じで、笑いは明るさを増した。
「ブルース」
クラークはブルースのベッドの端に腰を下ろし、穏やかな笑みを浮かべたまま名を呼んだ。
「何だ?」
「わたしの名前は、カル=エルだ。普段はクラークと呼んでくれればいいけれど」
「カル」
ブルースがためらいもなく口にすると、クラークは鮮やかな色で微笑みを深くした。
長い睫毛に縁取られた空の青が細まる。顔が見え難いのは逆光のせいだが、より近付いてきて、見えなくなった。額に口付けられる。
「嬉しいな。その名を呼んでくれるのはブルースだけだ」
瞬きもせずにクラークを見つめるブルースの眼差しはまるで小さな子供のそれだ。きょとんとして、どうしてクラークがキスをしたかなど想像もつかない。ただぼんやりと、それが悪いものではないことを知っていて、抵抗しない。クラークの秘めた望みをそのまま実行すれば、彼はきっと泣いてしまうだろうに。
「…クラーク」
呼びなおしたのは本能的なものだろう。クラークは今度は優しく口元を緩め、ブルースの髪を指で梳いた。
「何かな?」
「君は、キャンプに行ったことが?」
「あるよ。小さな頃にね、サマーキャンプに行った。…熱が上がってきたね」
うん、と小さく頷くブルースは少しだけとろんとした目をしている。それでも子供時代の話に興味があるのか、クラークを見上げる。クラークはスモールヴィルの話や、ガールスカウトの女の子と喧嘩をしたことや、よく遊んだ少年の話を語りだした。その間中ずっとブルースの髪を梳いていると、やがて若き大富豪は目を閉じた。
「キャンプの夜は肝試しをするんだけれど、一番小さなラナが満天の星を指差して――」
たわいもない話だ。だが社交界では絶対にこんな話はしないだろう。ブルースがぽつりぽつりと相槌に語る言葉から推測すると、彼は両親を失う前から寄宿舎に入っていたらしく、友人も少なかったようだ。
「……君が『友人』を欲しがっているのは理解しているんだけれどね」
規則正しい寝息を立て始めたブルースの頬にもう一度口付け、クラークは苦笑した。
「おやすみ、ブルース」
「では申し訳ございませんが、うちの坊ちゃまが寝付くまで相手をしてやっていただけますか」
アルフレッドが頭を下げ、クラークは慌てて首を振った。
「そんな気になさらないでください。わざわざベッドなんて入れていただかなくても、ソファでも大丈夫ですし、そもそもあんまり寝なくても平気なんで!」
「ケント君、歯は磨いたか?」
ブルースの横槍に執事がクラークを洗面所に案内する。クラークが歯を磨いている間に、執事は若主人を叱りつけた。
「ケント様は坊ちゃまのおもちゃではないのですからね、ちゃんと明日の仕事に支障がないように睡眠をとって頂いて、坊ちゃまもこれ以上悪化しないようにおとなしくベッドに収まっているのですよ。夜遊びはいけません」
「今日は何も”イベント”がないから大丈夫だろう。ゴッサムも静かなものさ」
「”舞踏会の仮面”も手直しをしなくてはなりません。”同伴者”をどうなさるか、よくお考えください」
わかった、と頷いてブルースは鼻までシーツを被った。クラークにと出してきた簡易ベッドは少し離れたところに置かれたが、それだけでわくわくとする。子供の頃に聞いたキャンプはこういうものかも知れない。
「具合はどうですか、ミスタ?」
「ブルースでいいぞ、ケント君」
戻ってきたクラークは洗面所で服も着替えて、コットンの上下というラフな姿だった。伊達眼鏡はなく、前髪も掻きあげている。それは確かにスーパーマンだが、誰もが知るスーパーマンではなかった。
「お休みなさいませ、旦那様、ケント様」
おやすみ、と二人同時に返し、互いの顔を見合わせて吹き出す。その瞬間まで同じで、笑いは明るさを増した。
「ブルース」
クラークはブルースのベッドの端に腰を下ろし、穏やかな笑みを浮かべたまま名を呼んだ。
「何だ?」
「わたしの名前は、カル=エルだ。普段はクラークと呼んでくれればいいけれど」
「カル」
ブルースがためらいもなく口にすると、クラークは鮮やかな色で微笑みを深くした。
長い睫毛に縁取られた空の青が細まる。顔が見え難いのは逆光のせいだが、より近付いてきて、見えなくなった。額に口付けられる。
「嬉しいな。その名を呼んでくれるのはブルースだけだ」
瞬きもせずにクラークを見つめるブルースの眼差しはまるで小さな子供のそれだ。きょとんとして、どうしてクラークがキスをしたかなど想像もつかない。ただぼんやりと、それが悪いものではないことを知っていて、抵抗しない。クラークの秘めた望みをそのまま実行すれば、彼はきっと泣いてしまうだろうに。
「…クラーク」
呼びなおしたのは本能的なものだろう。クラークは今度は優しく口元を緩め、ブルースの髪を指で梳いた。
「何かな?」
「君は、キャンプに行ったことが?」
「あるよ。小さな頃にね、サマーキャンプに行った。…熱が上がってきたね」
うん、と小さく頷くブルースは少しだけとろんとした目をしている。それでも子供時代の話に興味があるのか、クラークを見上げる。クラークはスモールヴィルの話や、ガールスカウトの女の子と喧嘩をしたことや、よく遊んだ少年の話を語りだした。その間中ずっとブルースの髪を梳いていると、やがて若き大富豪は目を閉じた。
「キャンプの夜は肝試しをするんだけれど、一番小さなラナが満天の星を指差して――」
たわいもない話だ。だが社交界では絶対にこんな話はしないだろう。ブルースがぽつりぽつりと相槌に語る言葉から推測すると、彼は両親を失う前から寄宿舎に入っていたらしく、友人も少なかったようだ。
「……君が『友人』を欲しがっているのは理解しているんだけれどね」
規則正しい寝息を立て始めたブルースの頬にもう一度口付け、クラークは苦笑した。
「おやすみ、ブルース」
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