20080721
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事件の全容を書いた紙を失くしました…。。
「事件はおそろしく単純だ」
ブルース・ウェインが歩きながら呟くと、ピーター卿は笑った。
「だが証拠がないというヤツさ。これは厄介だ。単に事件が複雑というなら颯爽と探偵の出番だが、逆は苛立ちしか生まない。主犯はレックス・ルーサーだろう。君のガールフレンドの疑念のとおり」
「件の短刀はどこに?」
「貸金庫に入っている。彼女はあれを元の所有者に戻すか、永遠に解体したいと望んでいたが不可能だ」
「何故?」
「元の所有者はすでに死んでいる。子孫はないらしい。そして破壊するには美しすぎる。宇宙からきたものを崇拝する趣味はないが、しかしあの硬度のものを鍛錬した日本の鍛冶師には相応の敬意を払うね」
ピーター卿はにこりと悪意のない笑みをブルースに向けた。遠く、ヘリコプターの羽音が響く。
「ルーサーがジョーカーと組んでるとは思いませんが、しかし唆されたという可能性は大きいでしょう」
玄関ホールでヘリの到着と車の用意を確認すると、ブルースは細々とした連絡方法を確認しあった。
「……うーん。ねえ、ブルース。聞きたいんだが、君はその男に対して少しなりとも友情めいたものを感じたりするかい?」
ピーター卿が少し気弱ささえ見せて小首を傾げると、ブルースは傍らにつくねんと立っていたゴードンがはっと竦むほど冷ややかな声で唸った。
「食前に葉巻を吸う男をですか?」
「それは結構。それでこそ僕も遠慮なく絞首台に送ってやろうというものさ!」
まだ絞首台に送られるほどの罪かどうかはわからないが、とパーカー主席警部はポツリと呟いたが黙殺された。
「それにあのハゲのせいで私はゴッサムシティ・バンクの役員会に負けたんです。奴がクロならわたしは見合いをせずに済む」
「ああ!めったに聞けない君の若様っぷりになにやらときめきさえ覚えるよ、ブルース。見合いが嫌ならジーヴスを救出して助けてもらうがいいさ。あの男ほど意に染まぬ婚約を破談にさせるのが上手い従僕を僕は他に知らない」
「彼は意に添う婚約も破談にしますよ。バーティも花嫁かジーヴスかで後者を取っているうちは無理でしょうが」
「そういえば、君のリチャードに僕のヒラリーを紹介する話だけど」
「ああ。手紙をいただいてから考えたのですが、ディックに転座鳴鐘術が極められるかどうか…」
「でも君、あの二人が出会ったら素敵だと思わないかい?」
「おそろしく行動力があって、口先三寸で人を丸め込む詐欺師か探偵になるでしょうね」
「なお素晴らしいことに彼女には堅物で俗人としか言いようのない叔父がいる」
「ああ!それは紳士泥棒向きです。淑女というべきか。確かに素敵だ」
滔々としゃべりながら、しかし差し出されたジャケットを羽織り、帽子を受け取り、ステッキの具合を確かめ、ピーター卿が片眼鏡を嵌め直すと二人の紳士はお互いに見つめあった。
ぴったりと体のラインにあったスーツに目を走らせ、小物をチェックする。
「アルマーニとはずいぶん野心的だね。君のイメージではないが悪くない」
「そのステッキは噂の探偵道具ですか?」
「そう。1フィートのメモリが入ったマラッカのステッキだ。君が必要なら貸しても構わない」
「いえいえ。ステッキよりも有能な主席警部をお借りしますから」
にこりと笑って、ブルースは車に乗り込み、同乗したパーカーが軽く手を上げる。
それを見送って、ピーター卿はゴードン警部に向き直った。
「僕らはとんでもないことをしてしまったかも知れませんよ!警部」
「どうしたんです?」
「犯罪者に厳しいブルースと犯罪者に容赦ないチャールズを一緒に送り出してしまうなんて!」
ピーター卿は快活に笑うとヘリに飛び込み、ゴードンはバンターからどっしりとしたサンドイッチのバスケットを受け取った。
「どうぞお持ちください。乗員人数の都合で手前は同行できませんが、御前をよろしくお願いいたします」
従僕に美しい角度で丁重に頭を下げられ、ゴードンは「はい」と子供のように返事をして飛び立った。
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というわけでやっとウェイン邸を出発です…。
ブルース・ウェインが歩きながら呟くと、ピーター卿は笑った。
「だが証拠がないというヤツさ。これは厄介だ。単に事件が複雑というなら颯爽と探偵の出番だが、逆は苛立ちしか生まない。主犯はレックス・ルーサーだろう。君のガールフレンドの疑念のとおり」
「件の短刀はどこに?」
「貸金庫に入っている。彼女はあれを元の所有者に戻すか、永遠に解体したいと望んでいたが不可能だ」
「何故?」
「元の所有者はすでに死んでいる。子孫はないらしい。そして破壊するには美しすぎる。宇宙からきたものを崇拝する趣味はないが、しかしあの硬度のものを鍛錬した日本の鍛冶師には相応の敬意を払うね」
ピーター卿はにこりと悪意のない笑みをブルースに向けた。遠く、ヘリコプターの羽音が響く。
「ルーサーがジョーカーと組んでるとは思いませんが、しかし唆されたという可能性は大きいでしょう」
玄関ホールでヘリの到着と車の用意を確認すると、ブルースは細々とした連絡方法を確認しあった。
「……うーん。ねえ、ブルース。聞きたいんだが、君はその男に対して少しなりとも友情めいたものを感じたりするかい?」
ピーター卿が少し気弱ささえ見せて小首を傾げると、ブルースは傍らにつくねんと立っていたゴードンがはっと竦むほど冷ややかな声で唸った。
「食前に葉巻を吸う男をですか?」
「それは結構。それでこそ僕も遠慮なく絞首台に送ってやろうというものさ!」
まだ絞首台に送られるほどの罪かどうかはわからないが、とパーカー主席警部はポツリと呟いたが黙殺された。
「それにあのハゲのせいで私はゴッサムシティ・バンクの役員会に負けたんです。奴がクロならわたしは見合いをせずに済む」
「ああ!めったに聞けない君の若様っぷりになにやらときめきさえ覚えるよ、ブルース。見合いが嫌ならジーヴスを救出して助けてもらうがいいさ。あの男ほど意に染まぬ婚約を破談にさせるのが上手い従僕を僕は他に知らない」
「彼は意に添う婚約も破談にしますよ。バーティも花嫁かジーヴスかで後者を取っているうちは無理でしょうが」
「そういえば、君のリチャードに僕のヒラリーを紹介する話だけど」
「ああ。手紙をいただいてから考えたのですが、ディックに転座鳴鐘術が極められるかどうか…」
「でも君、あの二人が出会ったら素敵だと思わないかい?」
「おそろしく行動力があって、口先三寸で人を丸め込む詐欺師か探偵になるでしょうね」
「なお素晴らしいことに彼女には堅物で俗人としか言いようのない叔父がいる」
「ああ!それは紳士泥棒向きです。淑女というべきか。確かに素敵だ」
滔々としゃべりながら、しかし差し出されたジャケットを羽織り、帽子を受け取り、ステッキの具合を確かめ、ピーター卿が片眼鏡を嵌め直すと二人の紳士はお互いに見つめあった。
ぴったりと体のラインにあったスーツに目を走らせ、小物をチェックする。
「アルマーニとはずいぶん野心的だね。君のイメージではないが悪くない」
「そのステッキは噂の探偵道具ですか?」
「そう。1フィートのメモリが入ったマラッカのステッキだ。君が必要なら貸しても構わない」
「いえいえ。ステッキよりも有能な主席警部をお借りしますから」
にこりと笑って、ブルースは車に乗り込み、同乗したパーカーが軽く手を上げる。
それを見送って、ピーター卿はゴードン警部に向き直った。
「僕らはとんでもないことをしてしまったかも知れませんよ!警部」
「どうしたんです?」
「犯罪者に厳しいブルースと犯罪者に容赦ないチャールズを一緒に送り出してしまうなんて!」
ピーター卿は快活に笑うとヘリに飛び込み、ゴードンはバンターからどっしりとしたサンドイッチのバスケットを受け取った。
「どうぞお持ちください。乗員人数の都合で手前は同行できませんが、御前をよろしくお願いいたします」
従僕に美しい角度で丁重に頭を下げられ、ゴードンは「はい」と子供のように返事をして飛び立った。
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というわけでやっとウェイン邸を出発です…。
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