20080721
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2008年12月にアップしたものの、改稿版です。
屋上が舞台ですが、オリキャラ多数です。
屋上ものの時系列からは脱線しています。
話の流れは全体的にやや暗くなりますが、死にネタはありません。
あとこのシリーズはわりとブルースがツンデレです(苦笑)(うちのブルースはクラークにべた惚れなので)
屋上が舞台ですが、オリキャラ多数です。
屋上ものの時系列からは脱線しています。
話の流れは全体的にやや暗くなりますが、死にネタはありません。
あとこのシリーズはわりとブルースがツンデレです(苦笑)(うちのブルースはクラークにべた惚れなので)
どうしてと問われれば、彼が、どこかブルースに似ていたからかも知れない。
「どうしたんですか?」
ゴッサムの住宅密集地にあるビル。築年数はもう二十年ぐらい経っているだろう。あちこち痛んでいて、お世辞にもいい住居とはいえない。そんなビルの屋上で、彼は声を殺して泣いていた。
「……」
私をみた彼は茶色の目を大きく見開いた。まあ、突然赤いケープの男が空から降りてきたらびっくりするだろう。年のころは二十代後半か、童顔な三十代ということもありうる。どちらにせよ、泣き濡れた目元は赤く、どこか庇護欲をかきたてるものを持つ。
「…怪我をしていますね?」
端正な顔立ち、それこそブルースに雰囲気の似た面差しの、その口の端が切れて血が滲んでいる。思わず手を伸ばすと、彼はびくりと身を震わせた。
「ああ。失礼。大丈夫ですか?」
「……いえ、ごめんなさい。大丈夫です。ありがとう」
涙で汚れた頬を乱暴に袖でぬぐうと、彼は立ち上がり、柔らかく微笑んだ。自分の感情を一瞬で包み隠す術を身につけているところまで、ブルースを思い出させた。
「スーパーマン。ゴッサムまで出張ですか?」
「ええ。ちょっと事件の関係で。もう解決したのですけれどね。通りかかったら、たまたま、あなたが私の知っている人に少し似ていたので」
どこが、と言われると困る。大富豪でも黒騎士ない、ウェイン・マナーで一人書斎にいるときのような、そんな静謐な空間にしか現れない、誰でもないブルースに似ていて、そんなことは誰にも説明できない。
「そう。…あなたも、私の知っている人に似ていますよ。そんなこと言ったら悪いかな…。弟なんですけど」
「そんなことないですよ。ま、私がどうしようもない悪人とかなら、彼がかわいそうですけど」
「はは。それはないですよ。あなたはヒーローだし、弟は警官です」
少しはにかむように笑い、彼はそっと袖を引いて、手首の痣を隠した。誰かにねじり上げられたような、痕。よく見ればシャツのボタンも一つ無くなっていた。
それが気になったのは、彼が少し、ブルースに似ていたからだ。
「何者だ?」
ガーゴイルの上で落ち合った闇の騎士は街の光を見下ろしたまま、問うた。
先ほどの彼が泣いていた場所はずっと遠くで、見えているはずもない。だがこの街でバットマンが知らないことなど何もないのだろう。
「コナーだよ。彼は料理人で、弟は警官なんだって」
「……コナー・エメットか」
「知っているのかい」
私が苦笑すると、バットマンはカウルの下でわずかに眉を寄せた。
「私はお前ほど視力が良いわけではない。コナー・エメットは殉職した警官の息子だ」
「彼、泣いていたけど」
「父親が死んだのは七年も昔だが、弟は最近、怪我をしたはずだ」
バットマンはゆらりとガーゴイルの上から滑空した。いつでも突然だ。さよならも言わせてくれない。
「でも今日は随分おしゃべりをした方だよね」
バットマンは寡黙だ。ブルースもあまり喋らない。最近は私がウェイン・マナーを訪ねても、ケイブに入っても、彼はただ視線を向けるだけ。追い出しもしないが、かまってもくれない。私が喋りたいことを喋って、話題が尽きればそれでおしまい。
「コナー・エメット、か」
気になるのはどうしてだろう。言葉を交わしたからか、それとも彼が似ているからか。
いや、似ている、というのは正確ではない。もしブルースがあんな悲劇的な事件がなくて、そもそもゴッサムの王子なんかではなくて、一般家庭に育っていたら。
もしかしたらコナーのように、はにかむように笑ったのかも知れない。
「ああ。馬鹿だなあ、私は」
ないものねだりに恥ずかしくなり、それを振り切るように私も夜明けに向かって飛び立った。
すぐにガーゴイルに再会することになるなんて、想像もしないで。
「どうしたんですか?」
ゴッサムの住宅密集地にあるビル。築年数はもう二十年ぐらい経っているだろう。あちこち痛んでいて、お世辞にもいい住居とはいえない。そんなビルの屋上で、彼は声を殺して泣いていた。
「……」
私をみた彼は茶色の目を大きく見開いた。まあ、突然赤いケープの男が空から降りてきたらびっくりするだろう。年のころは二十代後半か、童顔な三十代ということもありうる。どちらにせよ、泣き濡れた目元は赤く、どこか庇護欲をかきたてるものを持つ。
「…怪我をしていますね?」
端正な顔立ち、それこそブルースに雰囲気の似た面差しの、その口の端が切れて血が滲んでいる。思わず手を伸ばすと、彼はびくりと身を震わせた。
「ああ。失礼。大丈夫ですか?」
「……いえ、ごめんなさい。大丈夫です。ありがとう」
涙で汚れた頬を乱暴に袖でぬぐうと、彼は立ち上がり、柔らかく微笑んだ。自分の感情を一瞬で包み隠す術を身につけているところまで、ブルースを思い出させた。
「スーパーマン。ゴッサムまで出張ですか?」
「ええ。ちょっと事件の関係で。もう解決したのですけれどね。通りかかったら、たまたま、あなたが私の知っている人に少し似ていたので」
どこが、と言われると困る。大富豪でも黒騎士ない、ウェイン・マナーで一人書斎にいるときのような、そんな静謐な空間にしか現れない、誰でもないブルースに似ていて、そんなことは誰にも説明できない。
「そう。…あなたも、私の知っている人に似ていますよ。そんなこと言ったら悪いかな…。弟なんですけど」
「そんなことないですよ。ま、私がどうしようもない悪人とかなら、彼がかわいそうですけど」
「はは。それはないですよ。あなたはヒーローだし、弟は警官です」
少しはにかむように笑い、彼はそっと袖を引いて、手首の痣を隠した。誰かにねじり上げられたような、痕。よく見ればシャツのボタンも一つ無くなっていた。
それが気になったのは、彼が少し、ブルースに似ていたからだ。
「何者だ?」
ガーゴイルの上で落ち合った闇の騎士は街の光を見下ろしたまま、問うた。
先ほどの彼が泣いていた場所はずっと遠くで、見えているはずもない。だがこの街でバットマンが知らないことなど何もないのだろう。
「コナーだよ。彼は料理人で、弟は警官なんだって」
「……コナー・エメットか」
「知っているのかい」
私が苦笑すると、バットマンはカウルの下でわずかに眉を寄せた。
「私はお前ほど視力が良いわけではない。コナー・エメットは殉職した警官の息子だ」
「彼、泣いていたけど」
「父親が死んだのは七年も昔だが、弟は最近、怪我をしたはずだ」
バットマンはゆらりとガーゴイルの上から滑空した。いつでも突然だ。さよならも言わせてくれない。
「でも今日は随分おしゃべりをした方だよね」
バットマンは寡黙だ。ブルースもあまり喋らない。最近は私がウェイン・マナーを訪ねても、ケイブに入っても、彼はただ視線を向けるだけ。追い出しもしないが、かまってもくれない。私が喋りたいことを喋って、話題が尽きればそれでおしまい。
「コナー・エメット、か」
気になるのはどうしてだろう。言葉を交わしたからか、それとも彼が似ているからか。
いや、似ている、というのは正確ではない。もしブルースがあんな悲劇的な事件がなくて、そもそもゴッサムの王子なんかではなくて、一般家庭に育っていたら。
もしかしたらコナーのように、はにかむように笑ったのかも知れない。
「ああ。馬鹿だなあ、私は」
ないものねだりに恥ずかしくなり、それを振り切るように私も夜明けに向かって飛び立った。
すぐにガーゴイルに再会することになるなんて、想像もしないで。
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