20080721
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クロスオーバー執事編。長らく書いている方は本気でオールキャラになってきたので、まだもう少しかかりそうです。
アルフレッドとジーヴスとバンターさん。時代は現代、ブルース35歳頃に無理やり合わせてありますので、バーティはエドワーディアンなのに!とか泣かないでください、お嬢さん。
アルフレッドとジーヴスとバンターさん。時代は現代、ブルース35歳頃に無理やり合わせてありますので、バーティはエドワーディアンなのに!とか泣かないでください、お嬢さん。
アルフレッド・ペニーワースは珍しく主人の華やかだが癖のあるご友人方(男性)を迎えることになり、二週間前から張り切って準備をしていた。この(男性)というのが嬉しいような哀しいような。
何はともあれ、普通の人でさえあれば大歓迎だという老執事に、ブルース・ウェインは微妙な笑みを浮かべた。
「じゃあ君は、彼らが普通の人だというんだね?アルフレッド」
「少なくとも空は飛ばれませんので」
しれっと答えて、アルフレッドは掃除に戻った。だが確かにあのご友人方を「普通」の言葉でくくるのは不適切かも知れない。
客は二名。そしてそれぞれに従者が一人ずつ。つまり主寝室と居間と従者の部屋と彼らのブラッシングルームを用意しなくてはならない。特に従者同士の仲がいいとは聞いていないので、ブラッシングルームも二つ用意したほうがよいだろう。
そう結論したアルフレッドは東棟の二階の最奥にピーター・ウィムジィ卿の部屋を取り、その向かい側の階段に近い部屋をバートラム・ウースター氏用に宛がった。もともと社交用に改築された東棟にはそれぞれの部屋にバスルームがついているし、何かあった場合に階段を降りればアルフレッドの部屋に近い。
手放しで喜んでいるわけではないが、いかんせん異性に偏りがちな上に広く広くそして浅い、主人の交友範囲に思いをめぐらせると、この二方が心安く訪ねてきてくれる関係だというのは僥倖だった。
「アルフレッド。もし私が帰るのが遅かったら、もてなしよろしく頼む」
「はい。お任せください」
ブルースはゆったりとした動作でジャケットを羽織り、ネクタイをチェックしてから帽子を被った。
マフィアみたいだ、とディックにいわれたことがあるが、マフィアよりはずっと品が良いはずだ。鏡に映る自分は父に似たというより、どこか母の面影がある。まだまだ貫禄が足りないと、ブルースはため息を漏らす。
だが今日の役員会議に負けるわけにはいかない。
「そうだ。ピーター卿は古書がお好きだから希覯本などあれば案内してあげてくれないか」
気遣わしげなアルフレッドに微笑み、ブルースは屋敷を後にした。
来客を迎えるため、アルフレッドは扉を開け、そしてにこやかな笑顔を浮かべて年若い紳士であるバートラム・ウースターだけを通し、従者の鼻先で扉を閉めた。
「ミスター・ペニーワース」
仏頂面で従者が自ら扉を開けて入ってくる。今度はアルフレッドもやや辛辣な色のある笑みを浮かべて、内側に招いた。
「ようこそ。レジナルド。もちろん、あなたも歓迎いたしますとも」
「お久しぶりです。お元気そうで何より」
他愛無い挨拶のはずなのに何やら空間を埋める静電気にバーティはぽかんと口を開けた。
「ジーヴス。君、知り合いだったのかい?」
「ミスター・ペニーワースはわたしが所属しておりますサーヴァンツ・クラブの名誉顧問のお一人でいらっしゃいます」
「というと、ジュニア・ガニュメデス・クラブの」
「それだけではございませんが」
アルフレッドは好々爺よろしく笑みを浮かべて、二人を居間へと案内した。
アルフレッドが茶の支度をしに退出すると、バーティは育ちのよい若さまよろしく、すぐに部屋で二番目に居心地のよさそうな窓辺のソファに落ち着き、のどを鳴らす猫のように微笑んだ。
「レジナルド」
従僕のファーストネームを転がすように呟く。
「ご主人さま?」
「君のファーストネームを呼ぶ人間がいるなんてびっくりだな」
「左様でございますか?しかしミスター・ペニーワースのあれは一種の嫌味でございますので、間に受けられませんよう」
「嫌味だって。君、彼を怒らせるようなことをしたのかい?」
ジーヴスはぴくりと眉を動かした。まったく老人に非があるとは考えもしないようなバーティにちょっとだけ傷つく。
「ジーヴス?」
だが小首を傾げる主人に彼は目を細めた。
「メトロポリスのさるクラブで出会いましたときに、カードで少々意地の悪いことを」
「いかさまでもしたのか?」
「いいえ。さる名家の話を耳打ちしただけでございます」
「……名家?」
「いえ、すでに没落しているのですが、そちらの家に代々仕えておられたようで」
「なんだって君はそんなこと知ってるんだ。あ、クラブ・ブックか」
はたと気づいて口を噤むバーティは、件のクラブ・ブックの秘密には触れないことにしている。
曰く、メンバーは自らの雇用者の私事に関する詳細を同冊子に収録すべく提供するように求められる。
ジュニア・ガニュメデス・クラブの会則十一条にはそのように定められているらしい。
ということはすなわちバーティの私事に関するあれやこれやも、他ならぬこの男によって書かれているはずで、もしかするとアルフレッドだって知っているかも知れないのである。
「もういい。聞かない。君も言わなくていい」
「はい。ご主人様」
しかし他人の私生活を穿鑿するのはスポーツマンのすることではないと信じている若様はぷいと顔を背けた。
「やあやあやあ。すでにくつろいでいるね。バーティ」
にこやかに登場したピーター卿は躊躇いもなく一番上等の席に腰を下ろし、アルフレッドが差し出した紅茶を受け取った。紳士方が談笑はじめたのを見計らって、召使いたちは階上の客間に案内される。
「卿とミスタ・バンターはこちら側のお部屋を。ウースター様とレジナルドはそちらのお部屋です」
レジナルド、との呼びかけにピーター卿の忠実なるマーヴィン・バンター氏は無言で、ただ興味深げに眉を上げた。ちなみにバンター氏はどこのサーヴァンツ・クラブにも所属していない。たまの休みはロンドンの芝居小屋をめぐったあとに、役者たちと一杯やるのでそんな暇がないのだ。
「ミスター・ペニーワース。どうぞお許しください。ミスター・バンターに笑われてしまいます」
ジーヴスがしおらしくいうと、アルフレッドはふむ、と頷き、そして歩き出した。
「そうですね。一人前の紳士お側付き紳士に向かって、あまりに大人気ない仕打ちでしたね。レジーと呼ぶほど親しいわけでもありませんし。お部屋が片付きましたら、お茶を差し上げましょう。ジーヴス」
「ありがとうございます」
アルフレッドは振り返ると、頭を軽く下げるジーヴスの背後に立つバンターに頷き。
「もちろん、バンター軍曹。あなたにも」
「これはこれは古い話を。あなたがインドからヒマラヤ越えをしたという噂は本当ですか?こぶしほどもあるルビーを見たとか」
「さて、どうでしょうねえ。この年になると秘密が覚えきれなくって…」
喉の奥で笑い、そしてアルフレッドはバイクの音にまなじりを下げた。
「ウェイン邸のヤング・ジェントルマンがお帰りのようですね。ご紹介させていただかなくては」
秘密のひとつの軽やかな帰宅にアルフレッドは足音もなく、しかし軽やかに階段を降りた。
-------------------------------
続くか続かないかは今後の妄想ネタ次第です。血を見そうだったのですが、個人的にアルフレッド至上主義だけど、ジーヴスには負けて欲しくない!という複雑なヲトメ心なので、半端になりました…。
何気にペンギンんちに仕えていたというTHE設定。
このクロスオーバーネタを書き始めると満遍なくすべての愛するキャラクターたちを動かしたくなるので、際限なく長くなりますね…。誰が読むんだ、誰が。
何はともあれ、普通の人でさえあれば大歓迎だという老執事に、ブルース・ウェインは微妙な笑みを浮かべた。
「じゃあ君は、彼らが普通の人だというんだね?アルフレッド」
「少なくとも空は飛ばれませんので」
しれっと答えて、アルフレッドは掃除に戻った。だが確かにあのご友人方を「普通」の言葉でくくるのは不適切かも知れない。
客は二名。そしてそれぞれに従者が一人ずつ。つまり主寝室と居間と従者の部屋と彼らのブラッシングルームを用意しなくてはならない。特に従者同士の仲がいいとは聞いていないので、ブラッシングルームも二つ用意したほうがよいだろう。
そう結論したアルフレッドは東棟の二階の最奥にピーター・ウィムジィ卿の部屋を取り、その向かい側の階段に近い部屋をバートラム・ウースター氏用に宛がった。もともと社交用に改築された東棟にはそれぞれの部屋にバスルームがついているし、何かあった場合に階段を降りればアルフレッドの部屋に近い。
手放しで喜んでいるわけではないが、いかんせん異性に偏りがちな上に広く広くそして浅い、主人の交友範囲に思いをめぐらせると、この二方が心安く訪ねてきてくれる関係だというのは僥倖だった。
「アルフレッド。もし私が帰るのが遅かったら、もてなしよろしく頼む」
「はい。お任せください」
ブルースはゆったりとした動作でジャケットを羽織り、ネクタイをチェックしてから帽子を被った。
マフィアみたいだ、とディックにいわれたことがあるが、マフィアよりはずっと品が良いはずだ。鏡に映る自分は父に似たというより、どこか母の面影がある。まだまだ貫禄が足りないと、ブルースはため息を漏らす。
だが今日の役員会議に負けるわけにはいかない。
「そうだ。ピーター卿は古書がお好きだから希覯本などあれば案内してあげてくれないか」
気遣わしげなアルフレッドに微笑み、ブルースは屋敷を後にした。
来客を迎えるため、アルフレッドは扉を開け、そしてにこやかな笑顔を浮かべて年若い紳士であるバートラム・ウースターだけを通し、従者の鼻先で扉を閉めた。
「ミスター・ペニーワース」
仏頂面で従者が自ら扉を開けて入ってくる。今度はアルフレッドもやや辛辣な色のある笑みを浮かべて、内側に招いた。
「ようこそ。レジナルド。もちろん、あなたも歓迎いたしますとも」
「お久しぶりです。お元気そうで何より」
他愛無い挨拶のはずなのに何やら空間を埋める静電気にバーティはぽかんと口を開けた。
「ジーヴス。君、知り合いだったのかい?」
「ミスター・ペニーワースはわたしが所属しておりますサーヴァンツ・クラブの名誉顧問のお一人でいらっしゃいます」
「というと、ジュニア・ガニュメデス・クラブの」
「それだけではございませんが」
アルフレッドは好々爺よろしく笑みを浮かべて、二人を居間へと案内した。
アルフレッドが茶の支度をしに退出すると、バーティは育ちのよい若さまよろしく、すぐに部屋で二番目に居心地のよさそうな窓辺のソファに落ち着き、のどを鳴らす猫のように微笑んだ。
「レジナルド」
従僕のファーストネームを転がすように呟く。
「ご主人さま?」
「君のファーストネームを呼ぶ人間がいるなんてびっくりだな」
「左様でございますか?しかしミスター・ペニーワースのあれは一種の嫌味でございますので、間に受けられませんよう」
「嫌味だって。君、彼を怒らせるようなことをしたのかい?」
ジーヴスはぴくりと眉を動かした。まったく老人に非があるとは考えもしないようなバーティにちょっとだけ傷つく。
「ジーヴス?」
だが小首を傾げる主人に彼は目を細めた。
「メトロポリスのさるクラブで出会いましたときに、カードで少々意地の悪いことを」
「いかさまでもしたのか?」
「いいえ。さる名家の話を耳打ちしただけでございます」
「……名家?」
「いえ、すでに没落しているのですが、そちらの家に代々仕えておられたようで」
「なんだって君はそんなこと知ってるんだ。あ、クラブ・ブックか」
はたと気づいて口を噤むバーティは、件のクラブ・ブックの秘密には触れないことにしている。
曰く、メンバーは自らの雇用者の私事に関する詳細を同冊子に収録すべく提供するように求められる。
ジュニア・ガニュメデス・クラブの会則十一条にはそのように定められているらしい。
ということはすなわちバーティの私事に関するあれやこれやも、他ならぬこの男によって書かれているはずで、もしかするとアルフレッドだって知っているかも知れないのである。
「もういい。聞かない。君も言わなくていい」
「はい。ご主人様」
しかし他人の私生活を穿鑿するのはスポーツマンのすることではないと信じている若様はぷいと顔を背けた。
「やあやあやあ。すでにくつろいでいるね。バーティ」
にこやかに登場したピーター卿は躊躇いもなく一番上等の席に腰を下ろし、アルフレッドが差し出した紅茶を受け取った。紳士方が談笑はじめたのを見計らって、召使いたちは階上の客間に案内される。
「卿とミスタ・バンターはこちら側のお部屋を。ウースター様とレジナルドはそちらのお部屋です」
レジナルド、との呼びかけにピーター卿の忠実なるマーヴィン・バンター氏は無言で、ただ興味深げに眉を上げた。ちなみにバンター氏はどこのサーヴァンツ・クラブにも所属していない。たまの休みはロンドンの芝居小屋をめぐったあとに、役者たちと一杯やるのでそんな暇がないのだ。
「ミスター・ペニーワース。どうぞお許しください。ミスター・バンターに笑われてしまいます」
ジーヴスがしおらしくいうと、アルフレッドはふむ、と頷き、そして歩き出した。
「そうですね。一人前の紳士お側付き紳士に向かって、あまりに大人気ない仕打ちでしたね。レジーと呼ぶほど親しいわけでもありませんし。お部屋が片付きましたら、お茶を差し上げましょう。ジーヴス」
「ありがとうございます」
アルフレッドは振り返ると、頭を軽く下げるジーヴスの背後に立つバンターに頷き。
「もちろん、バンター軍曹。あなたにも」
「これはこれは古い話を。あなたがインドからヒマラヤ越えをしたという噂は本当ですか?こぶしほどもあるルビーを見たとか」
「さて、どうでしょうねえ。この年になると秘密が覚えきれなくって…」
喉の奥で笑い、そしてアルフレッドはバイクの音にまなじりを下げた。
「ウェイン邸のヤング・ジェントルマンがお帰りのようですね。ご紹介させていただかなくては」
秘密のひとつの軽やかな帰宅にアルフレッドは足音もなく、しかし軽やかに階段を降りた。
-------------------------------
続くか続かないかは今後の妄想ネタ次第です。血を見そうだったのですが、個人的にアルフレッド至上主義だけど、ジーヴスには負けて欲しくない!という複雑なヲトメ心なので、半端になりました…。
何気にペンギンんちに仕えていたというTHE設定。
このクロスオーバーネタを書き始めると満遍なくすべての愛するキャラクターたちを動かしたくなるので、際限なく長くなりますね…。誰が読むんだ、誰が。
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執事三昧
こんばんは、お邪魔いたします。
坊ちゃま方の共演に続いて執事の共演!!たまりません。
坊ちゃま方と最強執事の集う館へ超人がうっかり飛び込んでくるような事態は起こりえませんでしょうか。と期待を込めて発言してみます。
坊ちゃま方の共演に続いて執事の共演!!たまりません。
坊ちゃま方と最強執事の集う館へ超人がうっかり飛び込んでくるような事態は起こりえませんでしょうか。と期待を込めて発言してみます。
Re:執事三昧
超人は書きかけの方に出てきます。とりあえずそっちを終わらせることを目標にしているのですが、ご主人3名と執事3名を無駄なく動かしたいので悩みます…。
ルーサーと王子は出したい。とかぶつぶつ呟いていたらバーティに惚れそうなブルースが脳裏をよぎったので収拾がつきません。どうしましょう。
久し振りに本屋にいったらジーヴスが平積みになった上に「天下最強執事」のポップが揺れておりました。なんだか恥ずかしいです…(笑)
ルーサーと王子は出したい。とかぶつぶつ呟いていたらバーティに惚れそうなブルースが脳裏をよぎったので収拾がつきません。どうしましょう。
久し振りに本屋にいったらジーヴスが平積みになった上に「天下最強執事」のポップが揺れておりました。なんだか恥ずかしいです…(笑)